55 モンスターは歯が命

 長らく腕だけリビングアーマーの俺ですが、新しい鎧を発見しました!


 ただし、あるのは轟々流れてる川?の対岸の洞窟。

 ってかそもそも、なんであんなところに鎧が落ちてるんだろうな。


 横のロロコに聞いてみる。


〈なあロロコ。あそこに鎧が落ちてるの見えるか?〉

「ん、見える」

〈なんであんなところにあると思う?〉


 なんでこんな警戒してるかっていうと、なんかの罠だったりして、と思うわけだ。

 俺みたいな喋る奴じゃない、普通のリビングアーマーって可能性だってある。


 取りに行ったら襲われた! とかごめんだもんな。


「たぶん、行倒れた冒険者だと思う」

〈本当か?〉

「たぶん」


 ロロコは確証がなさげだ。

 まあ、この辺はこの子のテリトリーじゃねえしな……。


 もう一人に聞いてみるか。


〈クラクラ〉

「なんだ、リビタン殿」


 ……もう本人も、クラクラって呼び名に馴染んでるな。


〈この辺にリビングアーマーっていたりするか〉


「リビングアーマーか……。この辺りに詳しいわけではないが、洞窟ダンジョンには、普通いないのではないか?」


 ふーん、そういうもんなのか。


 じゃあ、まあ行くだけ行ってみるか。

 一応警戒だけはしつつな。


〈ロロコ、俺がちょっとランプを取ってくる。お前はここでクラクラと待っててくれ〉

「わかった」


 ロロコが頷く。


 俺はフヨフヨ浮かんで、水の上を飛んでいく。

 あー、こりゃ便利だな。


 考えてみりゃ、魔法とか使わず、デフォルトで空飛べるってめっちゃ有利だよな。

 こういう水以外にも、溶岩とか毒沼の上も通れるわけだし。


 ふよふよ~。

 ふよふよ~。

 ガチンガチン!


〈!?〉


 なんかすぐ近くで変な音が聞こえたね!?

 なに!?


〈ぎゃーーーーー!〉


 水面からでっかい魚が顔を出してこっちを噛んでくる。


 その歯!

 っていうか牙?

 口の中がギザギザしてて、超硬そう。


 上の歯と下の歯がぶつかるたびに鳴る音はどう考えても、金属の音だ。

 あんなのに噛まれたらやばいぞ。


 もっと上へ逃げろ!


 ゴン!


 いてえ!

 いや、痛いのは嘘だけど。

 天井か。

 これ以上は高く飛べないな。


 水面から、せいぜい3メートルといったところ。

 でも、ま、魚はこんなところまで跳ねてはこれないだろ――


 ばしゃ!

 ぶおん!

 ガチンガチン!


 ぎゃーーーーー!


 普通にきやがった!

 しかも、天井に噛み付いて、普通に岩を砕いて、また水に潜ってった。


 やばいよやばいよ……。

 俺、いつぶっ壊れるかわからないヒビだらけアーマーですよ。

 あんなのに噛みつかれたらひとたまりもない。


 ばしゃばしゃばしゃ!

 ぶおん、ぶおん、ぶおん!

 ガチンガチンガチンガチンガチガチガチガチ!


 しかもどんどん数が増えてきた!

 このパターン多いなモンスターは!


 数で攻めればどうにかなると思ってんのか?

 その通りだよ!


〈ひーーーーー!〉


 ここは逃げるしかない。

 こんな状態でバトルなんかやってられるか。


 ガチガチガチガチ!

 バキン!


 げ。

 一匹が食らいついて、付け根部分を噛み砕いた。


 二の腕パーツの一部が砕けて、激流に飲まれていった。


 急げ急げ!


 ばしゃばしゃばしゃばしゃ!

 ぶおんぶおんぶおんぶおん!

 ガチガチガチガチガチガチガチガチ!


〈ぬおーーーーーーーー!〉


 ――届いた!


 なんとか激流の上を渡りきり、対岸の洞窟へ。


 ふー。

 これで一息――


 ばしゃん!


 ウワーーー!?


 こいつら、獲物が陸にたどり着いても、平気で突っ込んできやがる。

 陸でも動けるのかと思ったら、そういうわけでもないみたいだ。

 ビタンバタン跳ね回るだけ。


 バカなの?


 しかし、ガチガチと歯を鳴らしてるので、近づきたくはない。


 さっさと鎧を確保しよう……。


「リビタン殿! 大丈夫か!?」


 対岸からクラクラが言ってくる。


〈ああ、問題ない! 変なモンスターがいるから、水には近づくなよ!〉


 俺はそう警告しておいて、鎧とランプのところに向かった。

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