26 ダンジョン脱出大作戦

〈こんなところかな〉

「うん。充分」


 俺とロロコの前には、大量の大ネズミの死体があった。

 洞窟のなかで探し回り、見つけたのを捕まえて倒したのだ。


『バッドラット

 平均HP:67

 平均MP:32

 平均物理攻撃力:16

 平均物理防御力:24

 平均魔法攻撃力:18

 平均魔法抵抗力:19

 解説:洞窟に生息するネズミのモンスター。たいてい集団で走り回っている。植物を食べるおとなしいモンスターだが、まれに興奮して集団で走り回る』


『バッドラット・マグ

 平均HP:89

 平均MP:56

 平均物理攻撃力:24

 平均物理防御力:32

 平均魔法攻撃力:87

 平均魔法抵抗力:25

 解説:バッドラットが魔法器官を発達させた個体。身体に魔力をまとわせ体当たりしてくる。』


 こいつらが、あの館で俺を追いつめたモンスターだったってわけだ。


 こんな弱いやつに苦戦してたのね、俺……。


 いや、実は今でも油断はできない。

 魔法抵抗力の低い俺は、バッドラット・マグの体当たりで今でも大穴が開く。


 今回はダンゴムシールドと鱗状鎧の金属板でなんとかなったけどな。


〈よし、じゃあ吊るそう〉

「ん」


 俺とロロコは、手分けして、大ネズミの死体に針金を巻いていく。

 針金は、鱗状鎧の板を連結していたやつだ。


 どうも、これは俺の身体とは認識されないっぽい。

 鎧パーツ同士を接続するためのベルトもそうなんだよな。

 最初は不随意筋みたいな感じだから動かせないだけなのかと思ったんだけど。

 鎧としてのメインパーツ以外は身体扱いにならないのかもしれない。


 さて、針金で巻いた大ネズミの死体を天井に吊るす。

 ちょうど洞窟の真ん中あたりになるようにな。


「下で火を焚いたら燻製ができる」

〈やるなやるな〉


 ロロコは美味しくいただけるかもしれないけど。

 ダークネスワームは多分生が好きだろう。


〈……よし。じゃあ待機だ〉

「うん」


 俺とロロコは、傍にほっておいた溝に隠れる。


 まだかなー。

 まだかなー。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 ……きた!


 地下鉄みたいな音が聞こえてきた。


 洞窟を覆うほどでかい口を開けて、ダークネスワームが現れた。

 さっきと同じやつかどうかはわからないけど、まあいい。


〈いくぞ、ロロコ〉

「いつでも」


 俺とロロコはそれぞれ身構えた。


 ――ばくん!


 ダークネスワームがネズミを飲み込んだ。

 が、針金が引っかかって上手く移動できないようだ。


 目の前にはまだネズミがぶらさっっているし、ワーム的にはもどかしいはず。


 そこへ飛び出す俺とロロコ!


 俺はワームの口元をよじ登り、鼻を探す。


 ――あった!

 丸い、小さな穴。


 ダークネースワームはこれで地下での方向を探っているのだ。


 その鼻を俺は、ロロコから預かったコウモリ羽の皮膜で覆ってやった。

 よし次!


 一気に移動して、計4個ある鼻の穴を全部塞いでやった。

 

 ふっふっふ。

 これで、どっちがどっちかわからなくなっただろう?


 ワームはまだ針金に手こずっている。


 よし!

 後方へ移動!


 後ろではロロコがすでに作業を終えていた。

 さすが、俺より手馴れてるな。


 ――ブモモモモモオオオ!?


 ダークネスワームが異変に気付いた。


 臭いが感じ取れなくなって、違和感を感じているのだ。

 そしてワームは、習性に従って、


 ――ブモモモモモモモモモゴゴゴゴゴ!


 真上に向かって穴を掘り進め始めた。


〈よし、つかまるぞ〉

「うん」


 俺とロロコは、ワームの身体に取り付けた特製手すりにつかまった。


 針金をワームの身体に刺して、反対の先を輪っかにする。

 輪っかには、手を傷めないようにコウモリの羽を巻いてある。


 ぐっ。

 けっこうな重みだ。


 しかも俺のほうは、下半身が落っこちないように片手で支えている。

 なので、手すりは片手でしか握れないのだ。


 とはいえ、ロロコも大変だろう。

 ぶらんぶらん揺れながら、両手で必死に手すりを掴んでいる。


〈離すなよ! 落ちたらアウトだ!〉

「大丈夫」


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 ダークネスワームはすごい勢いで上昇していく。


 それでもまだ出口は見えない。


 くそ、まだかよ……。


 ボゴン!


 お!


 ひときわ大きな音が響いた。


 ボロボロと、ワームの縁を土が落ちていく。


 ようやく地上に出た――!?

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