Interlude


 この世に生を受けてこのかた、恋慕というものに縁は無かった。


 ウヅキの件は例外だ。あれは、勘違い。決して恋と呼んではいけない。情けない過去だ。


 あの子への想いとは異なるおもい。


 一緒に居て、楽しい。もっと---


 画面の向こうの、フィクションだと思っていた。


 忘れもしない、あの鼓動の高鳴り。


 彼女の一挙手一投足。髪。銀髪。


 額縁に入れられた、変顔の彼女と僕。



 恋。恋。恋...。


 幾分初めての感情なのだ。恋かどうかなんて分からない。


 ただ、この気持ちが恋であって欲しいと願ってやまない。


 恋とは別の、何かであったら、いよいよ本当に僕は、手のつけようがない。


 もっと醜くて、夜闇のごとく暗い何か。


 勤勉な朝暉ちょうきは、毎朝僕の暗闇を照らしてくる。


 その都度心とカーテンを閉め切り、泥と自責に塗れて眠るのだ。


 きっと恋だと信じて、妄信して、今晩もあの場所へ行くのだろう。


 『"楽"に生きろ』とは彼女の言葉だ。


 深く考えず、『恋』ということにしておこう。


 考え過ぎるのは、ダメだ。


 皇女様に、恋を、したのだろうか。


 そう。僕は、したんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る