第088号室 4th wave イイ波きてるぅ⤴︎⤴︎⤴︎☆



 ソヒアが振るう荷電粒子刀セイバートーチの威力は絶大で、最小限の接地でいなすエイプリルの鋼鉄の義手が、赤熱を超えて真っ白に発光を始めた。


「あっ熱っうううい!………気がする!!」


 熱せられた義手は武器にもなる。まだの肩で荷電粒子刀セイバートーチを跳ね上げ、相手の腕を掴み肉の焼ける音を鳴らす。


 ソヒアは素早く掴まれた腕から逆の手へ、トーチを持ち替え小手払い。予測通りの一手にエイプリルは掴んだ腕を離すと、躱す必要が無いほどの余裕で光刃をかし、武術の欠片も無い前蹴りでソヒアを押し返した。


「いまよ!殺してぇーーーっ!!!」

「ムリですぅ〜てか、ゾンビ!」


 長方形の貯水タンクの上から小夜が絶叫、エイプリルは髪を掻き上げながら小さく首を振り、ジェスチャーでタンクの梯子を登る眷属ゾンビがいることを小夜に伝えた。


「はあ?こっちはいいから、ちゃんと………!??燃えてる!燃えてる!「燃えてる!!「燃えてる!!!『燃えてる!!!!』」」」


 エイプリルの赤熱した手に掻き上げられて発火した頭髪に気付いて小夜が叫ぶと、続いてジャックとサモニャンが声を上げて、ついでにソヒアもびっくりする。


「わぁああぁあああ!!?」


 エイプリルが頭の火事を消そうソヒアに背を向け、アメリカンサイズのプールに飛び込んで爆発に近い蒸気を上げた。


「ぶわっ!?ほとんど爆発じゃないの?」


 水蒸気の膜に覆われ蒸気を吹き上げ続ける義手を水から上げエイプリルは考えた。


(アイツの得物はもっと熱いってこと?じゃあ、得物アレに水を掛けたらもっと面白くなるんじゃないの??)


 エイプリルがプールから出ると全身機械フルフレーム化された身体が苦しげな駆動音を鳴らし、満々と水を湛えた巨大プールを引き摺りだす。


 ソヒアの受けを許さない防御力無視の猛攻にジャックの呪術が破られ、サモニャンの肉が焦がされていく。規格外の運用方法にプールを覆うフレームが耐え切れずに外れる。厚手の三重ビニールがはち切れんばかりにたわみ、水が波打ってしぶきを上げる。


 エイプリルに引き摺られたプールは最後には小走り程度までに加速し、エイプリルが飛び退いた後も屋上を滑り続けてソヒアに激突、倒れ込んだ拍子に荷電粒子刀セイバートーチが水面を斬り裂き、極瞬間的に蒸発が爆発、ただの水は体積を約1700倍に膨らまし、沸点を大きく超える過熱水蒸気となって空間を押し広げ、壊滅的な熱と衝撃でソヒアを吹き飛ばした。


 間欠泉の如く噴き上がった蒸気の柱は、荷電粒子刀セイバートーチをソヒアの指ごと頭上高くに射ち上げ、津波の如く寄せる波がソヒアの身体を屋上の縁へ押し流す。


 縁の柵を歪ませながらも引っ掛かり、屋上からの転落を堪えたソヒアは想わぬ反撃に感情を沸騰させた。


『異形に片足突っ込んだ程度の人間が舐めた真似して………!』

「うるさい!おかわりよ!!」


 小夜が貯水タンクの側面にツイストダガーを突き立てるも、全く歯が立たない。それでもその意図はガチ勢の3人にしっかりと通じていた。


 ジャックが思念動力で刀剣を操り貯水タンクの壁へ等間隔に突き立てる。サモニャンが枠組みに組み付き鉄骨を破断させる。小夜は転げて保全用の蓋を突き破り中に落ちる。


 台座から引き摺り下ろされコンクリートの床へ激突すると同時に、エイプリルのブチかましが貯水タンクの壁を刃傷に添って決壊させ、先のプールとは比べ物にならない水量で波を打って小夜が吹っ飛ぶ。


「チェックメイトだぜぇえええ………!!!」「ぎゃあぁああああ………!!!」


 相手を馬鹿にした態度でエイプリルが叫び大きく仰反ると、背後から小夜と波に呑まれて流れて行く。


『おお………ハイドロオベーション………!!』


 団地の魔が差したか溢れ出す水は明らかにタンクの貯水量を超えて、壁を作ってソヒアを呑み込み、木の葉のように錐揉み打って屋上に散らばる刀剣と共に押し流し滝となってソヒア共々、地上のアスファルトに叩きつけた。


「やったか!?」


 サモニャンの腕に掴まりついでに、むせ返る小夜のランドセルを引っ掛けたエイプリルが、言わねばなるまいと笑顔を溢した。



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