葉桜の君に

西川笑里

第1話 憂鬱

 正直、人生に疲れたなと思うことが増えた。最近、私は今まで何を目的に生きてきたんだろう、なんのために生きていけばいいのだろう、そんな思いで頭がいっぱいになる夜がある。

——どうせ勉強する気なんかない生徒の前に立ちたくない。


 誰も反応のないブログには、誰にも心を吐き出せない私のそんな愚痴ばかりがあふれている。そして、明日からの新しい学校のことを考えると憂鬱な気分になっていた。


 この春、3回目の転勤で私は生まれ故郷の高校に帰ることができた。ただ、ゴマスリが下手な、出世コースにも乗らない私は、いくら意欲があっても自分が卒業した進学校の教師は任せてもらえない。今回は同じ公立でも、進学率の低い商業系のしがない国語の教師だ。しかも、もともと私自身が商業系のスキルを身につけているわけでもない。ひたすら教師を目指して受験勉強をした私には、進学を希望しない彼ら、彼女らに教えてあげられるものもない。


——私はなんのために教壇に立つのだろう。

 

 どうせ誰も読んでいないブログに、どこの誰かわからないようにお茶を濁しながらそんな愚痴を書く。そして、そんな私に、なぜ私は生きているのだろうと言う思いが溢れてくる。


 そして私はダラダラと書き込んだブログの最後に、いつものように最後の1行を加えた。


「今日も読んでくれてありがとう。by秋田葉太」


 書き終わるといつものようにブルートゥースのキーボードの電源を切り、タブレットに充電用のコードを差込む。眼鏡を机兼用のテーブルに置き、そして私はお化粧を落とすためにいつものように洗面台に向かった。


 夏木葉子42歳、独身。職業、国語教師。それが私だった。




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