第6話 4/14-A 買い出し(行き)

 雨が上がると風が吹く!

 判っている、判ってるんだけど、この風ホントに何とかならんもんか!


「そんなこと言ってもさー、お前自然に文句言ってどうするよー」

「昨夜からすげー風過ぎて怖かった」

「……素直じゃん」


 何だその珍しいものでも見た様な顔は…… 


「だから昨日も泊まっていけば良かったのにー」

「こっちだって仕事があんだ仕事が」


 研究の下請けという地味で地味で地味なものなんだが、大学時代の恩師が忙しすぎるとかで、細かいテキスト照査作業をこっちに回してくれる。本当に個人的なレベル。

 しなくとも暮らせるけど、まあ。


「んで、今日の買い出し、ホントにそっち一人でいいんか?」

「お前がホムセン、ワタシがスーパー。妥当だろ?」


 ウチと向こうの買い出しは基本車。運転はワタシ。

 一緒にごはんもしている関係もあってか、買い出し係はワタシとこいつになることが大半。

 まあそらそうだ。皆色々家の仕事が忙しい。がっぷりそこでチームを組んでるおじさんおばさんにーちゃんねーちゃん達の邪魔になることだけは避けたい。

 それに買い出しに参加することで、ワタシも食費の一端は担える。


「ユクちゃんがそんなことしなくていいよー」


とおばさんは言うけど、無言で続けていたら、何も言わなくなった。

 だってこいつの家のメシは本当に美味い。

 ワタシだけだとマトモに食わなくなりかねないとこ、これは凄くありがたい。

 野菜は自給自足だから、それ以外。

 一昨日の鶏みたいのは別。さすがに。飼ってるとこから買ったんだから。

 で、こいつは元々稼業で必要なものがあった時の買い出し担当。家の仕事では基本的には手伝いレベル。本職があるから。

 だから連れだって買い出しに行くのがワタシ達になるのはまあ、当然と言えば当然。おねーさんがガキ共の迎えに行くついで…… は結構難しいらしい。


「あとさー、やっぱ連れだって行くのは今のご時世よろしくないと思う」

「あー」


 こいつもうなづく。子供を置いていけないとか重いものが多すぎる、という訳じゃないんだから。


「そんじゃ、後で外で鯛焼き食おうぜ」

「あん?」

「お三時」

「あー」


 ホムセンの外に、鯛焼きとたこ焼きの店がある。以前は中にあったのに、いつの間にか外。でもちょうどいい。風は爽やかだし。


「たこ焼きも」

「ソフトクリームも置かねーかなー」

「夏に期待」


 一路ショッピングモールへ、軽トラは走る。

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