第40話【金をばら撒け】

「見つけたぞ! ショーニン!!」


 ポイントを稼ごうと広場に向かった俺に声をかけてきた奴がいた。

 声はどこかで聞いた気もするが、見た目も名前も知らない奴だ。


「ここであったが百年目! 弟の恨み、覚悟しろ!!」

「えーっと……誰だ?」


 弟の恨みってのが分からん。

 そもそも恨まれるようなことなどしてはいない。


「しらばっくれるな!! お前のせいで、弟は垢BANされたんだぞ! ああ! 可哀想な弟よ!! 正義感が強いだけだったのに!!」

「垢BANって……まさかお前……?」


「忘れたとは言わせないぞ! 我ら四兄弟の末弟ゲレゲレの無念、ここで晴らしてやる!!」

「って、文彦じゃねぇのかよ!? 誰だよゲレゲレって!」


 てっきりあの【神官】の事かと思ったら、全然知らない奴だったぞ。

 マジで誰?


「ふざけるな!! 弟はなぁ、チートってやつが許せねぇだけだったんだよ……真面目なやつだったからなぁ。それ何度も何度も殺しやがって! お前が一回負けてやれば、弟は執拗にお前を狙うことなんてしなかったんだ!!」

「あー、思い出したぞ。アレだろ。前に文彦の書いたことを真に受けて何度も攻撃してきた奴。そうかぁ、あいつ垢BANされたかぁ……ざまだな」


 文彦ってのは前に俺をチート野郎とかブログに書いて、関係ないヒミコにまで迷惑かけたクソ野郎だ。

 結局ロキのおかげで見事垢BANしたって話だったが、そいつが流したデマを信じてうるさいくらい攻撃してきたのが、確かゲレゲレって名前だったな。


 てか四兄弟ってすげぇな。こいつの名前はチロル。

 チョコレートみたいな名前だけど、近くにいるプックルとボロンゴっていうのが残りなのかな?


「貴様ァ! 喰らえ! 我ら四兄弟【キラーパンサー】の実力!!」

「うるせぇ!!」


 おあつらえ向きに一直線に並んだから、俺は【銭投げ】を使って黙らせる。

 HPが高いやつが一人いたが、【連帯保証】も使ったから一撃だった。


 こいつら兄弟らしいから、まさに連帯保証人になってもおかしくないしな。

 お、ポイントが入ったぞ。どんどん行くか。


「いたぞー!! ショーニンだ! 囲めー!! あいつがラスボスだぞ!! ひとまず共闘だ!!」

「おう! あいつを倒してから、そっから残った奴のサドンデスだぞ!!」


『おーっと! 話題のショーニン選手! 大勢のプレイヤーに囲まれております! 大ピーンチ!!』


 おいおい……確かにルール上は問題ないけど、あからさまな個人狙いは正直どうなんだ?

 まぁいいけどな。


 俺は片っ端から見える範囲に【銭投げ】を使う。

 さっき使ったばかりの【連帯保証】は使えないから、サクサクは無理だが、確実に落としていこう。


「ぐえぇぇぇ! やっぱり強え!! 【貫通】持ちだぞ! ライン注意!!」

「うわぁああ! 正信ーー! 俺を置いて逝くなー!!」


 アップデートのおかげか、それなりに攻撃を食らうプレイヤーもいた。

 しかしそいつらは、俺の反射で攻撃を返されて返り討ちにあう。


 HPはまだまだ余裕があるが、集まってきたから頃合かな?

 俺はクールタイムが終わった【連帯保証】を使った後に、新しく覚えたスキル【金をばら撒く】を使う。


【金をばら撒く】

その場で回転しながらジルを10連ばら撒き敵に固定ダメージ(ジル×0.01)を与える。使用したジルは失う。(最大使用可能ジル100万ジル)


 これは待望の商人専用範囲攻撃スキル。

 言うなれば【銭投げ】の範囲版だな。


 しかもこれもが付与される。

 こいつはやべぇぞ?


「喰らえ!!」


 スキルを唱えた瞬間、俺は猛スピードで回転する。

 そこから放たれる10本のコインの筋!


 当たったやつは片っ端からダメージを受け、オーバーキルになった分はHPが高かったり、当たらなかったやつにダメージが飛んだりと阿鼻叫喚だ。


『うおおおお!! これがチート野郎と呼ばれたショーニンの実力だァ!! 一気にプレイヤーを殲滅しましたー! まさにチート!!』


 おい……GM、何言ってんだよ。

 しかも今呼び捨てにしたよね?


 まぁ、いいか。

 いいのか?


 ちなみにこんなスキルは連打は出来ない。

 クールタイムは30秒。長くはないが短くもない。


 まだ生き残った奴がいるな。

 大量にダメージを与えたおかげで、【吸収】の効果でHPは満たんだ。


 また地味に倒していってもいいが、これはポイントをできるだけ多く稼ぐイベント。

 時間をかけるのはよした方がいい。


「ということで、【ヘルフレイム】!!」

「ぐぎゃぁあああああ!!」


 出しみ惜しみすることなく、最大火力で行くぜ。

 これでこの辺りのプレイヤーは殲滅できたな。


『容赦ない!! 容赦ありません、ショーニン選手!! お前は魔神じゃない! 悪魔だーー!!』


 ……。

 もうあのGMは無視だな……。


「えーと、ポイントは……お! 一位だ! って、二位はロキのチームかよ!!」

「やっと見つけたぞ!! ショーニン、勝負だ!!」


 と叫んだ矢先に向こうから来てくれたようだ。

 相手は五人、ロキと葵そして他のやつらもパーティメンバー、見たことがある。


 一人いないのは……スルトってやつだな。

 まぁいい、相手にとって不足はない、勝つのは俺だ!

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