第15話【ダンジョン攻略-1】

 俺の目標である最難関ダンジョン攻略がたった今から始まる。

 ひとまず、クリアされていないダンジョンを順番にこなしていき、ダンジョン攻略に必要なものを調べていくか。


 まだ誰も挑戦したことの無いダンジョンも含めて、今ある未制覇ダンジョンの数は全部で5つあるらしい。

 このダンジョンは全て、パーティ毎に別れたりしないらしい。


「罠とかは一定時間で復活するとかなのかな。ひとまず一番レベルの低いやつに行ってみるか」


 俺は目的のダンジョンの「カーラ山脈」に向かった。

 中に入ると、そこは溶岩が至る所にある灼熱ダンジョンだった。


「うわ! すごいな。あれに落ちたらダメージ食らうのかな? まぁ、見た目だけで別に熱くないけど」


 真っ赤に燃える溶岩に落ちないように気を付けながら俺は先へと進む。

 出てくるモンスターは大体炎属性を持っているようだ。


 試しに「金に物を言わせる」と「金の匂い」を溶岩の中心で発動させてみる。

 音と臭いに釣れられて様々なモンスターが溶岩の中へと沈んで行った。


「あ、落ちたそばからポリゴンになっていくな。モンスターも溶岩に落ちたら死ぬのか。お? 経験値入ってるじゃん」


 ダメージを与えてないが、俺のスキルを食らったという事でタゲ取り認定されるらしい。

 フィールドダメージで倒した場合でも討伐認定になるのは美味しいな。


 調子に乗って俺は目につくモンスター全てを溶岩の中へと誘導してやった。

 中には溶岩に入ってもダメージを受けないモンスターもいたが、それは「銭投げ」で倒していく。


 それにしてもこのダンジョン、他のプレイヤーを全然見ないな。

 一緒のフィールドになるってのはデマだったのかな。


 快調に進んでいくと、やがて広いドーナツ型の足場のある場所に辿り着いた。

 この先は行き止まり、どうやらここがボスの出現ポイントのようだ。


 中央にはかなり大きな円形の溶岩溜り、周りも溶岩で覆われている。

 そこに続く一本の道からドーナツの端へと足を踏み入れる。


 瞬間、周りの溶岩から無数のモンスターが這い上がってきた。

 こいつは溶岩に落ちても死ななかったやつだ。


「こいつらがボス……ってことはさすがにないよな。全部倒したら中央から親玉が出てくるってことか?」


 溶岩に落とす手法は使えないが、音で群がらせることはできる。

 幸い広いと言ってもせいぜい半径10m程度だ。


 俺は持続時間を少し長くした「金に物を言わせる」を適当な足場に向けて使う。

 俺に向かって突進していたモンスターが全部現れたコインに向かっていった。


 コインに集まったモンスターに向かい、俺は「銭投げ」を休まず打ち込む。

 クールタイムがないからひたすら目に付くモンスターがいなくなるまで打ち続けた。


 最後の一匹がポリゴンになって霧散すると、地響きと共に中央の溶岩から身体を真っ赤に燃え盛らせた悪魔のようなモンスターが現れた。

 知識のおかげか、攻撃をする前にモンスター情報が読める。


 炎の魔神イフリート、HP:1000000。


 他にも色々と見れるが、まぁ俺には関係ないな。

 俺は350万ジルを使って、現れたイフリートを攻撃する。


 巨大なイフリートを埋めつくしてなお余りあるほどのコインの弾幕がイフリートを打ち付けた。

 そして大仰に現れた魔神から炎が消え失せ、土色に変わり、そして最後には燃え尽きた後の灰のようになった。


 現れた時と同じように地響きが起こる。

 イフリートの身体は崩れ去り、溶岩を灰が埋めつくした。


「お? なんか宝箱があるな。これがボス討伐報酬か?」


 俺は歩けるようになった灰の上を通って、中央に出現した宝箱に駆け寄る。

 豪華な外装からレアアイテムが入っているのでは、と期待をそそられる。


「よーし。開けるぞ。いいアイテム、来い!」


 中から出てきたのは小さな指輪だった。

 どうやら装飾品のようだ。


【魔神の指環】

イフリートの力が封じられている指環。

効果:炎属性ダメージ軽減50%、EXスキル「ヘルフレイム」を取得。


「おー! なんか知らないけど、装備すると使えるようになるスキルってのがあるのか!」


 さっそく装備し俺はスキルの画面を確認する。

 装飾品は全部で5つだからこれで全部埋まった。


 確かに新しいスキルが使えるようになっていた。

 詳細を開き、詳細を確認する。


【ヘルフレイム】

地獄の業火を呼び寄せる魔法。周囲10mに炎属性の大ダメージ。状態異常「火傷」を高確率で付与。


「魔法だ! やったぞ。しかも全体攻撃だ! って、クールタイムが20分って。俺の場合一回使ったら200分使えないってことじゃねぇか。使えん……」


 せっかく覚えた広範囲の全体攻撃だったが、今まで気にすることのなかった「クールタイム10倍」がここになって重くのしかかってきた。

 まぁ、これを装備しててもデメリットは無いし、炎属性のダメージも無くなるようだし、装備しておくか。


 さて、出る時はあそこのワープゾーンみたいなところに立てばいいのかな?


 俺は宝箱の後ろに一緒に現れた淡い青い光を放つ魔法陣の上に立つ。

 景色が変わり、辺りを見渡すとダンジョンの入口に戻されたのが分かった。


 通知音と共にワールド全体に通知が流れた。


『【カーラ山脈】攻略を【ショーニン】が初めに成し遂げました!!』


「おお! こうやって最初の攻略者の名前が通知されるのか! これは俄然がぜんやる気が出るな!!」


 気を良くした俺は、周りにプレイヤーが居ないことを確認した後、「ヘルフレイム」を使ってみた。

 ひとまずどんな効果か実際に確認しておかないとな。


 MPが半減し、俺を中心として紫色の炎が辺り一面を覆い尽くした。

 一瞬のことでダメージは確認できなかったが、辺りにいたモンスターは全て消え失せてる。


「えーっと、なるほど。EXスキルって言うのも、クールタイムがえらく長いのも分かるな。こんなの連発出来たらさすがにやばいだろ」


 ひとまず緊急時に使う切り札のようなものを手に入れることができたようだ。

 俺は、ひとまず初めての攻略者になれたことをロキとヒミコにメッセージで伝えようと画面を開く。


「お、あいつらもあの通知見てたのかな。先にメッセージが来てるぞ」


『ショーニン!! どういうことですの!? すごいですわ! すごすぎますわ!! あー! あなたに装備を提供できたことを誇りに思いますわ!!』

『どういうことだい!? まさか、もう未到達ダンジョンの一つをクリアしちゃうなんて!』


 二人に意外と大したこと無かったと返信をしてから、俺は街に一旦戻ることにした。

 溶岩に落としたモンスターのドロップアイテムも全部手に入っていたから、それを売るためだ。


 それが終わったら、目標達成に一歩近付けたお祝いに、今日は街で楽しむことにしよう。

 思えば初めてインしてから、ずっと狩りしかしてなかった。


 せっかく金も溜まったことだし、元々の目的の豪遊するってのもやらないとな。

 っとその前に現実に戻って腹ごしらえをするか。

 ゲームの中でいくら食っても腹は膨れないからな。


☆☆☆


【無限】インフィニティ・オンライン速報 Part200


198 名無しさんファイト

おい!

とうとうカーラ山脈討伐者が出たぞ!

ってか誰だよ?ショーニンって


199 名無しさんファイト

見た見た!

ワールドニュースに出てたな!!

誰か知ってるやついねぇの?


200 名無しさんファイト

実は俺がショーニンなんだ

崇めろ


201 名無しさんファイト

>>200

成りすましワロタ

じゃあ、お前どうやって強制火傷付与フィールドで大量湧きするモンスター狩ったのか言ってみろよw


202 名無しさんファイト

そうそう

しかもあそこのボスのHPやばいくらい多いんだろ?

10万与えたけど1/10くらいしか減ってないってどっかで見たぞ


203 名無しさんファイト

しかもたまに使ってくる回避不能の全体攻撃とかどうやって対処するんだよw

回復役がまっさきに死んだわwwww


204 名無しさんファイト

おーい、>>200

攻略法はよw

何黙ってんだよw


はい、偽物乙ーwwww


205 名無しさんファイト

そんな偽物なんかどうでもいいから、ショーニンの情報知ってるやつ出せよ

さすがにベータ版からのやつだろ?

見たことあるやついねぇの??


206 名無しさんファイト

黙ってて悪かったな

実は俺がショーニンだ


207 名無しさんファイト

もうその流れいいってwwww

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