ポッカリーネは言いました。

"私、春が好きなの。暖かくて、ポカポカしていて…何だかとっても、切なくなるの。"

ポッカリーネとは、よく夕陽の見える丘で話をします。

夕陽の時間をふたりは大切にしていました。

どうして春が切ないのか、いつだって不安で仕方がないハルホスには分かりませんでした。

"最終的に、自分がよかったらそれでいいんじゃない?他人がどうとか、そんなことよりもっと、自分を生きてみなさいよ。"

"……自分を生きるってなんだろう。"

"誰が何を言おうと、私は春が好きなの。四つ葉が咲いて、風が気持ちよくて。また、美しい春を探しに行くのよ、来年も。"

確かに風が気持ちよかったのです。

そよそよと吹いていて、ハルホスの頬を優しく撫でました。

こんなに暖かなところで美しい景色を見ていて、どうして僕はこんなにも臆病なのだろう。そう思うとため息が出ました。

ハルホスのため息も、風がさらっていきました。そよそよと吹いて、ポッカリーネの頬を撫でました。

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