俺と幼馴染と異世界転生

HERO

第1話


『友達、欲しいなぁ。』


心の中で呟いたつもりだったが、どうやら声に出てしまっていたらしい。


『つまんないなぁ。』


またもや口から無意識に悲痛な声が漏れてしまう。

この可哀想な男の名前は榊原 優。


現在、高校二年の夏休み真っ只中であるのにも関わらず、毎日をゲームと漫画に捧げている男子高校生。

所謂ヒキニート。


バイトも部活もしておらず、人生に三回しかない高校生の夏休みというゴールデンな日々を一人で家で過ごしていた。


(コンビニでも行こう)


午前一時、小腹が空いたため近くのコンビニへ行くことにした。

約一週間ぶりに外に出る優は、重い足取りで部屋から出て階段を降り、玄関のドアを開けた。


夏とは言ってもやはり夜は肌寒く、半袖のTシャツに半ズボンという格好の優は家を出てすぐ後悔をした。


『さっむ。

夏の夜なめてたわ。』


コンビニに着き、中に入ると冷房はあるものの外の夜風よりは暖かく感じた。


優はさっさとカップラーメンを手に取り、レジでお金を払って無愛想な定員からお釣りを受け取りコンビニから出た。

すると


『あっ、。』


目の前から、綺麗な黒髪をポニーテールで結び、キリッとした大きい瞳で優を睨みながら歩いてくる女子高生につい変な声が出た。


何故ならその女の子は優の幼馴染で、小中高と同じ学校に通っている。


しかし高校に入ってからはあまり仲良くはなく、むしろ一方的に優は嫌われていた為、気まずく感じたからである。


そんな優から目を逸らし無言で横を通り過ぎたその子の名前は、相原 麻里香あいはら まりか

小さい頃からのあだ名はマリー。


(目合ったのにまさかのフルシカト!?

いやまぁ俺も挨拶すらできなかったけど。)


少ししょんぼりしたが、優も歩き出そうとした。

すると今度は黒いパーカーにマスクとサングラス、明らかに怪しそうな男がブツブツとなにか言いながら優の横を通り過ぎて、コンビニに入っていった。


(怖っ。

なにあれ強盗かなんかか?まあそんな訳ないか。)


優は今度こそ帰ろうと歩き出したその瞬間、後ろのコンビニから女の子の悲鳴が聞こえた。


『なんだ!?

びっくりした、、ってマリーの声か!!』


一瞬迷ったが、優はコンビニへ走って入った。


そこにはさっきの怪しい黒いパーカーの男が、麻里香の上に馬乗りになりナイフを振りかざし、今にも麻里香の体に突き刺そうとしていた。

優はとっさにその男に向かって突進した。


『なにしてんだぁ!!!!!』


男は麻里香の上から突き飛ばされ、近くの商品棚にぶつかった。


『マリー!!今のうちに逃げろ!!!』


優は麻里香に近寄り体を起こそうとしたが、麻里香は目に涙を浮かべ、体は震えていてうまく力が入らず起き上がることができなかった。

定員を探したが姿が見えなかった。


そのうちに男は立ち上がり、今度は叫びながらナイフを構えて優に向かって突進してきた。


『邪魔するなぁ!!!!』


『危ねぇ!』


優はナイフをかわした。

しかし男の勢い余った体に押し倒された。

男に馬乗りされた優は叫んだ。


『や、やめろ!!!』


しかしもう遅かった。


『死ねぇ!!!!』


グサっ、、

グサっ、グサっ


『う、、にげ、て、』


バタッ




(なんだ、、おれ、死んだのか?、

とても寒い。暗い。)


『やめて!!

私がなにしたっ、、うぐっ、、、』


(マリー!!!

あれ、声が出ない、。

マリー、!)


こうして俺とマリーは黒いパーカーの男にナイフで刺されて、殺されたようだ。


マリーが絶命する悲鳴を聞いた後、すぐに俺の意識も飛んでしまった。





『、、、あ、あれ?痛くないぞ、』


俺は目を覚ました。

死んだと思い込んでいたが、どうやら今俺は生きている。


『ってなんか落ちてるんですけどぉぉぉぉぉ!?!!』



目を覚ますと俺は空を飛んで、、いるのではなく、真っ暗闇の空を猛スピードで落下していた。


『うわぁあぁぁしぬしぬしぬ!』


このままだと地面に叩きつけられ、即死である。

そう思って二度目の死を覚悟し、目を閉じようとすると、真上から女の子の叫び声が聞こえてきた。


『キャーー、、!!お、おちてるぅ!!!!』


上を見るとそこには、マリーが俺と同じように落下していた。


しかし、俺も落下を続けているためマリーを見上げることしかできなかった。

俺はマリーに勇気を出して話しかけた。


『マリーぃ!!生きてたのかぁ!!よかったぁぁあぁ』


『ばっかじゃないのぉ!!私たちまたしぬわよぉ!!!なに冷静にはなしかけてんのよぉぉおぉ!!!』


俺はマリーと久し振りに話せて少し嬉しかった。


『ってそんな場合じゃねぇ!!どうしよぉおぉお!!!』


俺は我に返った。

一瞬喜びを感じたのもつかの間、落下死するという恐怖から俺は気を失ってしまった。



俺は目を覚ました。

また死んだような気がしたのだが、生きているらしい。


俺は、見慣れないベットの上にいる。

こじんまりとした部屋の窓からは夕日の光が差し込んでいた。

俺は精神的に疲れてしまい、小さく呟いた。


『どんな悪夢だよこれ、、』


『嫌な夢でも見たのですか?』


横から女の子のやさしい声が聞こえた。


俺は驚き横を見ると、そこにはまるで光を放っているかのように綺麗な色をした金髪に淡い青色の瞳、整った目鼻立ちで、ゲームに出てくるエルフのような少女が、木の椅子に座っていた。


俺はマリーを除いて、あまり美少女というものに会ったことが無かったのだが、この子は正真正銘の美少女だった。

金髪美少女が俺に話しかけた。


『まだどこか痛むのです?

遠慮せず言ってくださいませ。』


(なんだこの完璧パツキン美少女は、、)


俺は心の中でそう呟き、あまり現状を理解できていないため、この少女に話を聞いてみることにした。


『あっ、えっと、、ありがとう。

全然痛みは無いよ!』


『本当ですか!?

頑丈なのですね、あなた!

まさか一週間でここまで回復するなんて。』


彼女は微笑み嬉しそうにそう言った。

だが、俺は戸惑った。


(え!?

一週間!?!?

そんなにここで寝てたの?

というかなんで落ちたはずなのに生きてるんだ、、)


彼女は俺が質問をするより先にまた話し始めた。


『ビックリしたんですよ?

あなた達が一週間前にこの村の湖に落ちてきた時は、、絶対に死んでると思いました。』


(幸運に湖に落ちたとはいえ、あんな高さから落ちたら普通死ぬよな、。)


ん?


『ってそこじゃねぇ!!』


俺は思わず叫んでしまった。


『ひゃい!?』


彼女は跳ねて驚いた。俺は構わず話を続けた。


『あなた達?

ってことはマリーも一緒に湖に落ちたんだよな、。』


『ええ、もう1人女の子が。』


『、、マリーは無事なのか?』


俺は恐る恐る彼女に聞いた。

彼女は笑顔をでこう答えた。


『ええ、あの女の子はまだ目は覚ましてないけれど、生きていますよ!』


(良かった、、)


俺はホッとして、一気に力が抜けた。

彼女は話を続けた。


『あなた、名前はなんていうのですか?』


『俺、は、えっと榊原 さかきばら ゆうって言います。』


彼女は驚き顔をしてこう言った。


『へえ!珍しい名前ですね!』


(そうかな?割と普通じゃないか、?)


『君は、なんて名前?』


俺は聞き返した。


『私はエルです。エル・バイスと言います。

いい名前でしょう?』


自慢げにそう名乗った彼女の名前を聞いて、この子はハーフなのだと思った。


(かわええ。おっと危ない口角が勝手に上がってしまう、。)


冷静を取り戻して彼女へ質問をすることにした。


『ここは、えっと、なんて村なの?』


『アリス村です。

大陸の北東に位置する小さな村。

あなた達は何処から来たのですか?』


女の子と話すことに慣れない俺は発する言葉の変な所に句読点をつけてしまう。

昔からの悪い癖だった。


そんな俺にお構いなく彼女は答え、更に俺に質問をしてきた。


(アリス村なんて聞いたことねぇな、まず大陸って何大陸だ??)


戸惑いつつも俺は正直に答えた。


『えーと、俺は日本から来たんだ。

まあ来たというか、落ちた?

俺も実はよくわからなくて、。』


『にほん?聞いたことないですわね、。何処らへんにあるのですか?』


(え?

日本を知らない?

なのに日本語は通じてるのか??)


俺は頭がこんがらがってきた。


『あー、アジアにある島国だよ。

知らないのに日本語、喋れるの?』


彼女は首を傾げてこう言った。


『日本語?

何言ってるのですか?

私たち今グノシス語で会話してるではないですか。

おかしな人ですね。』


そう言って彼女はまたニッコリと笑った。


(かわええー、、じゃなくて!

どうゆうことだ?いよいよ全くついていけなくなった。)


俺は情報を集めることにした。


『ちょっと、色々質問させてくれないか?

俺、あまり状況が掴めなくてさ。』


彼女は笑顔でこう答えた。


『いいですよ!

そのかわり私からも質問させてください!』


こうして俺と金髪美少女エルはお互いに知りたいことを質問し合った。


そして辿り着いた結論が、俺と幼馴染は異世界転生をしたということだった!!!!



















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