第125話 有名人

「あ、あの!葉柚さ──」


「大丈夫だよ?パパの手作りケーキだから?」


手作りケーキ…?これが…?


「パパね、結構有名なパティシエなんだけど、世界中飛び回って今も修行最中らしいんだよね」


「修行…?パティシエ……?」


「そう!これはパパが、心夏ちゃんへの感謝を込めて作ったものなのです!だから遠慮は要らないよ!」


「感謝ですか…?」


感謝と言われても、何かした覚えはないんですが……


「うん、さちくんと仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくしてあげて欲しいってパパからの伝言だよ」


「でも、それは私がそうしたく──むぐっ……」


「どう?」


「お、美味しいです……」


チョコレートとクリームの味がふんわりと口の中に広がってそれはもう美味しいです。


「そういえば、葉柚さんのお母様は何かしているんですか?いつもは葉幸くんと葉柚さんの2人しか家にいないみたいですし」


「あれ?聞いてなかったの?ママはピアニストとして、これまた世界を飛び回ってるんだけど聞いたことないかな?ママも結構有名だよ?」


そんな話を聞いて反応したのは私ではなくロータスさんでした。


「もしかして、あの浜辺梨乃さんだったんですか!?」


「あ、マーちゃんは知ってるの?」


「もちろんです!小さい頃に1度だけ、テレビ越しにしかみたことがないんですけど、梨乃さんの弾くピアノは素晴らしくて今でも鮮明に覚えています!」


「そうなんだ!」


「あの時の梨乃さんのピアノは──」


それから帰るまでの間、私たちはケーキを食べながらピアノトークを延々と続けるのでした。

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