17話 ヒキニート、京を駆け抜ける!?
「お腹すいたから先に何か食べよっか」
「歩くん知ってる?京都駅にはラーメン屋さんいっぱいあるんだよ」
「へえそうなんだ。じゃあラーメンにしよっか」
「そうだね」
慣れない駅を少しさまよい、ラーメン屋専門コーナーへ何とか着く。いい香りだ。新幹線でチョコを食べあったが、膨らんだのは胸であってお腹ではない。お腹ペコペコだ。
「結構どこも混んでるな」
「さすが激戦区だね」
結局俺たちは比較的空いていた京都ラーメン屋へ入ることにした。異様に空いているので少し心配だったが、注文したラーメンはおいしそうだった。
「おいしいね」
綾香がそう言ったので、今日はラーメン記念日、と言いたいところだが、なんとなくやめておいた。それにしても確かにおいしい。
「さて、まずは京都御所いこっか」
さすがに観光客も多く、それに呼応するかのように、バスは縦横無尽に走り回る。少し乱暴に思うくらいに。
「広いね~」
「ここに昔、天皇がいたのか……」
荘厳とはまさにこのことだ、と早くも観光モードに入っていた。
「歩くんは、豪邸に住みたい?」
「まあ、少しは憧れもするけど、そこまでかな」
「たしかにね」
「綾香は?女の子はお城とかに憧れたりするんじゃないの?」
「私は……歩くんと一緒ならボロボロの小屋でも良いよ」
「できればボロボロの小屋は避けたいけどな」
「そうだね」
そう言って笑う綾香の横顔がとてもいとおしかった。これが修学旅行なら告白してただろうな。ま、告白済みなんだけどな。付き合えて良かったと改めて思った。
「綾香」
「二条城にそろそろ行く?休憩する?」
出鼻をくじかれた感じになったので、とりあえず近くの二条城に行くことにした。
「ふ~ん、ここで大政奉還が行われたんだね」
人生でその話題を話し合うことがあるなんて思ってなかった。さすがは旅行。価値観が変わる人が絶えない訳だ。
「なんだか不思議だね」
「どうしたの?」
「好きな人と旅行するなんて夢のまた夢だと思ってたから」
「確かにね。俺もいまだに、ふと『これって夢かな』って思ってしまう時があるしな」
「あっ、それわかる!こんなにラブラブになれるなんて予想してなかったよ」
「俺も遊びのつもりだったのになあ」
「え~ひど~い!」
「冗談だって」
「わ、私だって歩くんなんか財布としか思ってないもんね~」
「割とリアルな奴やめろ」
「う、ウソだよ!?」
「傷ついたなー。自信なくしたなー」
「う~そっちから言ったくせに~。ごめんなさい~許してよ~」
「ハハハ、綾香の事はずっと好きだから安心しろよ」
「う、うん……ありがと。私もそうだよ」
「じゃあそろそろホテル行くか」
我ながらこの流れでホテルは意味深だが、仕方のないことだ。うん、仕方ない。
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