第3話 覚えたスキルでウキウキです

 「うわ」


 どすん。

 マイゼンドは、尻餅をついた。ここは自分の家だ。アパートの部屋。


 (これ、下の人から苦情くるかも……)


 彼が何をしているかというと、スキルのレベル上げだ。


 めでたくレベル10になりスキルを覚えたのだ。それが欲しいと思っていた「浮遊」だった!

 だがこの浮遊、一回に10秒しか浮けないのだ。レベルを上げると浮遊時間が延びるかもとチャレンジしているが、効果が切れると突然落ちるのだ。


 スキルや魔法は、レベル1なら10回使用するとレベル2になる。さらに20回使用するとレベル3にと10回ずつ増えて行く。

 MPの消費は、今の所消費量1なので足りなくなる事はないだろう。


 ステータスに回復力のパラメータがある為、アイテムを使わずとも回復するのだ。特段気にしていなかったマイゼンドだったが、初めて気にした。

 拾うのスキルはMPを消費しなかったからだ。

 この回復力は、10分間で回復する量になる。数値が10以上あれば1分で1は回復する計算だ。


 「やっと、レベルが上がった」


 浮遊:レベル2――30秒間浮く事が可能。スピード1。MP消費1。


 そして今更ながら気づいた事があった。この浮遊上下にしか移動出来ないのだ。つまり横に移動できないので、移動するのには何かに捉まって自分を引っ張るしかない。

 使えなさそうだが、10階まで浮ける様になれば、上り下りが楽になるとマイゼンドは思っていた。


 「30秒か。ちょっと不安だな」


 あと1レベル上げる事にした。

 休憩を挟みつつ、浮遊を試みた。ほんの少しだけ浮き、切れてもドンとならないように調整できるようになる。そして、レベル3になった。


 浮遊:レベル3――1分間浮く事が可能。スピード1。MP消費1。


 (おぉ。1分間浮けるのか。ただスピード1がわからない)


 試したいが落ちる時の事を考えると怖いのだ。

 そこで布団の上で浮く事にした。天井まで行く時間をまずは測る事にする。その結果、歩くスピードより遅い事がわかった。


 これだと1分間では、10階まで上がれない。


 「はぁ。今日はここまでにしよ」


 魔法など使った事がなかったマイゼンドは疲労感を感じていた。いつもよりぐっすりだった。



 次の日から拾う仕事の後は、浮遊のスキル上げをする事にしたマイゼンドは、早速帰って来てスキル上げをしていた。


 浮遊:レベル4――3分間浮く事が可能。スピード1。MP消費1。


 「まだ無理かな……」


 マイゼンドは溜息をついた。だんだんと面倒くさくなってきたのだ。


 「あ! そっか!」


 ふとマイゼンドは、ある事に気がついた。

 今までは、落ちるまで浮いていた。つまり効果が切れるまで、ずっと浮いていたのだ。だが別に、浮いてすぐ降りてもいいのだ。一回は一回だ。

 スピードを確かめる時に、天井まで上がった時は切れるまで浮いてはいなかった。それでも一回とカウントされている。


 「今頃気がつくなんて……」


 30分かけて、レベル4にした自分がおかしかった。レベル5にするのには、2時間もかかると思っていたのだ。


 MPが切れると回復を待って浮遊をレベル5にした。


 浮遊:レベル5――3分間浮く事が可能。スピード2。MP消費5。


 「いきなり上がった」


 浮ける時間は変わらないがスピードが上がった。だが消費も上がり、スキル上げがしづらくなったのだ。

 スピードを測るにしても上下にしか移動できないので、ここでは距離が足りない。そこで明日、外で試してみる事にした。



 ふわぁ。

 大きな背の高い木の側で、マイゼンドは浮遊を確かめる。明らかにレベル1より早い。

 高い場所にあった枝まであっという間だった。そこにがしっと捉まる。


 「ど、どうしよう。降りられない」


 浮遊できるのだから飛び降りればいいとわかっていても、恐怖心で手を離せないのだ。ほぼ、10階と同じ高さだ。ここから降りれなければ、アパートからも飛び降りるのは、浮遊があっても不可能という事になる。


 マイゼンドは、木の幹つたいで下りる。3分あるのでゆっくりでも大丈夫だった。途中までくれば、恐怖心もなくなり早く下りれた。


 「上がるより下りる方が問題だな。でも出来る事がわかったし、後は慣れかな」


 うーんと、木を見上げた。


 「ここで練習するかな」


 でも、命綱はほしいかもと思うマイゼンドだった。

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