ステータスに攻撃力はありませんが、☆《白星》スキルで乗り切ります

すみ 小桜

第1話 冒険者の神の加護

 ドキドキドキドキ……。

 木陰からジーッと、モンスターとの戦闘を覗き見する藍色の髪の少年がいた。彼には、戦闘スキルがない。あるのは――。


 「ふう。お前じゃないんだよ」


 冒険者が倒したモンスターにそう言って立ち去った。そこに先ほどの少年が枝を手に持ち近づく。


 つんつん。


 彼がやっているのは、死んでいるかの確認だ。


 「よかった。死んでいる」


 モンスターの横に屈み、一角兎の角を拾う・・。そう彼のスキルは、『拾う』だ。


 「マイゼンド! だからそれ、やめろって言っているだろう? 人の奪うなよ」


 振り向けば、赤髪の少年が立っていた。


 「あ、リトーン。違うよ、拾ってるの!」


 「いや、確かに捨て置いたものだからそういう解釈になるのかもだけど……。俺と同じパーティーにいたいのならやめろ!」


 リトーンは、マイゼンドの幼馴染で不甲斐なく思った彼をパーティーに入れてくれるように頼んだのだ。


 「わかったよ」


 渋々、マイゼンドはやめたのだった。



 この世界には、冒険者リスキーウォークの神が存在する。この神に願えば、ステータスを与えてくれる。

 強さを表すステータスは、皆合計値が同じになるように振り分けられ、必ず一つスキルか魔法を授かる。そして、10レベル毎にスキル・魔法獲得判定が行われ、50%確率で取得出来る仕組みだ。


 加護を受けた名:マイゼンド

 レベル:1

 HP:100

 MP:10

 魔法防御:10

 回復力:10

 素早さ:70

 適正属性:―

 不適正属性:―

 スキル:「拾う:レベル1」


 これがマイゼンドが授かったステータスだ。

 初期値の合計は200。皆初めは、200からスタートする。ここに表示されているステータスが、レベルアップと共に上がるパラメータだ。つまり彼の場合、一生懸命魔法を使おうが剣を振ろうが、一切魔力も攻撃力も上がらない。それを上げる為には、装備品で補うしかないのだ。

 しかもマイゼンドの場合、スキルが拾うなので戦闘向きでないのだが、一度加護を受けた者は冒険者を続けなくてはいけない。それが、冒険者の神との約束ごとだ。


 そんな彼を引き受けてくれたパーティーが、リトーンが所属するフルムーン。

 結成されたばかりだが、マイゼンドを除き皆レベル10以上。マイゼンドだけまだレベル7だった。


 これには訳がある。まず魔法やスキルを使うと一回につき経験値が10入る。これは、スキルレベルに関係なく10だ。なので、攻撃魔法や攻撃スキル持ちは、レベルが上がりやすい。

 そしてモンスターを攻撃して倒すと、経験値が入る。これにはちゃんと計算方法があるのだ。

 モンスターにもレベルが存在し、モンスターのレベル÷自分のレベル×100×与えたダメージ割合(%)だ。


 例を上げると、モンスターのレベルが4で、自分が2だった場合

 4÷2×100=200

 一人で倒せば、与えたダメージ割合は100%なので200の経験値が入る。

 200×100%=200

 そして複数で倒した場合は、与えたダメージ割合の%が変わる。もし10%なら20しか入らない。


 元々攻撃力がないマイゼンドは、武器の攻撃力のみなので、他の人よりダメージが少なく得られる経験値も少ないわけだ。

 そんな彼が、ちびちびと経験値を得る方法は拾うだ。なので拾っているのだが、あまり快く思われていない。



 「小遣い稼ぎしてくる」


 マイゼンドがリトーンに言うと、わかったと頷いた。

 冒険者協会を通して冒険者は、仕事を受ける事が出来る。危険度によって仕事はランクわけされていて、★なしが危険が伴わない仕事。これは、畑仕事や、掃除などモンスター退治とは関係ない仕事だ。

 この仕事を引き受けても普通は、経験値は得られない。モンスターを倒す訳でもスキルや魔法を使うわけでもないからだ。

 だけどマイゼンドは違った。

 拾う仕事をすれば、経験値が入るとわかったのだ!


 「おじさん! いも拾いに来ました!」


 「おぉ。助かる」


 前回、やってみたところ、これでレベルが一気にレベル7まで上がったのだ。ルンルンでマイゼンドは、仕事をこなしていく。呑気に明日は、ゴミ拾いにしようなどと思っていた。

 そんな彼が、次の日フルムーンから追放されたのだ。


 「待って! 昨日いも拾いでレベル一つ上がったから!」


 「何言ってんのお前。それすでに冒険者じゃないだろう?」


 フルムーンのリーダに言われ、マイゼンドは項垂れる。


 「ごめん、マイゼンド。パーティーのランク評価を上げたいんだ。全員レベル11以上じゃないと、ランクEに上げられないからさ」


 リトーンにそう言われ、小さく「うん」と返事を返す。

 一緒にいてもレベルの上げ方・・・が違うのだから仕方がないとマイゼンドは思うのだった。


 でもせめてレベル10まで待ってくれれば、何かスキルか魔法を覚えたかもしれないのに!

 そう思ったマイゼンドは、拾う仕事を受けて、レベル10を目指す事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る