第248話 ダンジョン会議4
ダンジョン会議にて、5-1エリアには高尾山を作ることが決定した。
「……もうちょっとダンジョン会議を続けよう」
「そうですか? ええ、もちろん構いませんが」
何やら一瞬で終わってしまったダンジョン会議だが、さすがにこれでは味気ないので、もうちょっと続けよう。
「5-1エリア解禁はいつにしようか? そこも結構重要だよね」
「そうですね。ダンジョンポイント的には問題ないので、エリアの作製自体は今すぐにでもできそうですが」
「ふんふん」
4-1
「んー、だけどもうすぐ夏がきて、4-1エリアのシーズンはまさにこれからでしょ? そこへ5-1をぶつけちゃうのもどうかと思うんだ」
「山のシーズンも夏だと思いますが?」
「ん? あぁ、確かに……」
それもそうか。山も夏か。
「いや、でも山はそこまでじゃないと思う。そこまで夏限定ってわけでもないと思うんだ。春や秋でも楽しめるでしょ? 紅葉とかもあるし」
それに低山の高尾山ならば、冬でも楽しめるだろう。それほどは危険もないだろうし。
というか、そもそも大人エルフなら、高い山の冬登山だって普通に悠々と楽しんでしまいそうな気配すらある。
「では、5-1は秋からにしますか?」
「そうしよう」
「わかりました。高尾山エリアは秋からということで」
「……高尾山エリア?」
その名称はどうなんだろう……。
確かに僕もナナさんも、高尾山を再現する気満々ではあるけれど……。
いや、もういっそのこと本当に高尾山と名付けてしまおうか。『高尾山』と書いた看板でも、エリア内に立ててしまったりなんかして……。
「うーん……まぁいいや。ひとまず山エリアはそんな感じだとして、夏は夏で湖エリアを盛り上げていこう」
「そうですね、頑張りましょう」
「とりあえずあれだね、僕としてはみんなに浮き輪で楽しんでもらいたいね」
「そういえば、何やら大量に作っていましたね」
そうなのだ、たくさん作ったのだ。
その浮き輪で、今年の夏もぷかぷかと流されていくエルフ達がたくさん見られたら嬉しい。
そしてその中に、今年は僕も混じりたい。
元々は僕がぷかぷかしたくて浮き輪を作ったはずなのに、結局去年はできなかったからな。今年こそはぷかりたい。
「あ、そういえば水着の
去年僕は、トードの皮を加工した水着を村に広めた。
材料となるトードは2-2エリアに出現するのだが、ここのトードは様々なバリエーションの皮をもつカラートード。
みんな好きな色を選んで、ジェレッドパパのお店に持ち込んでね――って仕組みになっている。
去年はシンプルな五種類の単色カラートードだったが、今年はナナさんが柄付きのカラートードを作ると意気込んでいた。
あれはどうなったんだろう? もう作って放流したのだろうか?
「ふふふ。すでにデザインは完成しています。今週中には2-2エリアのトードに反映できるかと」
「そうなんだ」
「ふふふ。ご期待下さい」
「うん……」
なんだろう。そこはかとなく不安。
……まぁいいか。もう任せるって言っちゃったしな。
それに、例え多少奇抜なデザインがひとつふたつ紛れ込んだところで、その柄を選ばなければいいってだけだ。ナナさんの好きにさせておこう。……なんか楽しんでるみたいだし。
「あ、そうだ。それから今日のギター発表会で少し気になったんだけど……」
「なんでしょう?」
「1-1エリアの大ネズミ……邪魔だよね?」
「邪魔……? いえ、それはモンスターなのですから、むしろ邪魔するのが仕事では?」
「そうなんだけどさ、今回みたいにイベント会場的な使い方をするとなると、モンスターがポップするのって邪魔じゃない?」
……まぁ、そもそもモンスターがポップするダンジョン内で、イベントをやること自体が間違いだっていう話ではあるのだけど。
「今日の発表会でも、一回ポップしたよね?」
「そうですね、近くの方があっさり討伐していましたが」
「演奏会の最中に突然モンスターが出現するとか、そんなパニックムービー的な事件が起きるのは、どうかと思うんだ」
文面だけ見ると、なかなかに恐ろしい事態じゃない……?
「しかし大ネズミのポップがないと、マスターのお遊戯会もできなくなりますよ?」
「それなぁ……。別にもうやめてもいいんじゃないかな?」
「いいんですか?」
「ん?」
「本当にやめてもいいんですか?」
「……もうちょっと続けたいかもしれない」
そう念押しされちゃうと、少し困ってしまう……。
やっぱりちょっと楽しいし、今でも楽しんでくれている人達はたくさんいるので、もうちょっと続けたいって気持ちもあったりして……。
「では、1-1を半分に区切りましょう」
「区切る?」
「片方は大ネズミがポップするエリア、もう片方はポップしないエリアに分けましょう」
「なるほど、それはいいかもしれない。……だけど、そんな変更が今更できるの?」
「問題ありません。真ん中に仕切りを作って、ポップ位置を変えるだけです。不殺大ネズミの費用が再度かかることもないです」
「へー」
改めてダンジョンってのはなんでもありだな。自由度の高さがすごい。
「じゃあ1-1はそんな感じでお願いしてもいいかな?」
「お任せください」
「うん。それじゃあ、最後の議題だ」
「最後ですか? さて、なんでしょう?」
「ダンジョン入り口に――二代目等身大リアルユグドラシル神像を設置する計画について」
「あぁ……」
「こちらの二代目さんを、入り口に置いてこよう」
一昨日完成した、二代目等身大リアルユグドラシル神像。
未だ僕の部屋で『きゃるーん』ってポーズをとり続けているのだけど、そろそろダンジョンの方へ移動していただこうと思う。
現在のダンジョン入り口は、とても簡素なものだ。
さすがに最初期の、地面に穴があって下への階段が続いているだけの状態からは変更を加えたが、上に石製の門をかぶせただけの簡素な入り口だ。
そんな入り口でも、この二代目さんがいてくれたら、だいぶ雰囲気も変わって華やかになるだろう。
……うん。とりあえず雰囲気だけは相当変わると思う。
「……本当にその二代目さんを、入り口へ飾るのですか?」
「ダメかな?」
「ダメではありませんが……」
「だって、ずっと僕の部屋に置いとくわけにもいかないでしょ」
「いかないのですか?」
「……夜とか結構怖いよ?」
なんせ本物の人間にしか見えないからさ、普段からかなり気になるし、ふと夜に目を覚ましたときとか、結構本気でビビるんだ……。
「……わかりました。それっぽい台座を作ってから、入り口前に設置しましょう。なんかお地蔵さんっぽく」
「お地蔵さんかぁ……」
「お供え物とかされるかもしれませんね」
「……されるかな?」
「……いえ、ないかもしれませんね」
「うん……」
なにせ本物そっくりだからな……。
拝んだりする人はいるかもしれないけど、本物そっくりの二代目さんの足元に食べ物を置こうとする人は、あんまりいないような気がする……。
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