第92話 僕の女性関係


 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:11(↑2) 性別:男

 職業:木工師見習い

 レベル:13(↑3)


 筋力値 8(↑2)

 魔力値 6(↑2)

 生命力 6

 器用さ 19(↑4)

 素早さ 3(↑1)


 スキル

 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv1


 スキルアーツ

 パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1)


 称号

 剣聖と賢者の息子



 ――これが、十一歳と半年の、アレク少年のステータスだ。


 父と母に改めて確認してもらったけど、このステータスならメイユ村とルクミーヌ村の間を、一人でも危なげなく往復できるらしい。


 というわけで、僕はこれから一人で森へ入るつもりだ。といっても、別に目的地はルクミーヌ村ではない。


 ――ルクミーヌ村で知り合って、少し仲良くなった九歳の幼女に、一人でこっそり会いに行こうとしているわけではない。


「……まぁ、別に会いに行ってもいいんだけどね。この前ルクミーヌ村の近くまで行ったときには、結局会わずに帰ったことだし」


 その幼女――ディアナちゃんは、もうすぐ初狩りにを迎える九歳の女の子だ。


 初狩りに対して少し不安そうだったので、励ましてあげたかった。

 初狩りを不安に思う気持ちは、きっと誰よりも僕がわかっている気がするから……。


「それにしても、レリーナちゃんのあれには驚いたな……」


 ディアナちゃんを心配していた僕の思考を読み取ったのかなんなのか、レリーナちゃんが突然ルクミーヌ村へ行こうと言い出したときのことだ。


 あのときは思わず一緒にいた父を生贄いけにえささげて、一人で逃げ帰ろうと思ってしまった。

 しかし、レリーナちゃんに胸ぐらを掴まれていた父が泣きそうな顔で僕に助けを求めてきたので、僕は逃走をあきらめ、レリーナちゃんを説得することにした。


 『ここは俺に任せて先に行け!』みたいなノリになるかと思ったのだけど、あれだと『ここはお前に任せて俺は先に行く!』みたいなことになってしまいそうだったので……。


 説得には時間と根気を要したが、最後はレリーナちゃんも納得してくれて、そのまま三人でメイユ村に帰ることになった。

 レリーナちゃんは頑張って頼めば、なんだかんだ僕のお願いを聞いてくれるのだ。


 ――何故だか帰り際、レリーナちゃんがルクミーヌ村の方角をにらみつけるかのように見ていた気がするが、それはたぶん気のせいだと思うことにした。


「そもそも、レリーナちゃんは何をもって僕のことを怪しんだんだろう……」


 僕は普通にしていたし、父も気が付かなかったと言っていた。しかしレリーナちゃんは明確に何か感じ取ったみたいだ。

 なんだかレリーナちゃんは、僕の女性関係についての洞察力が化け物じみてきたな……。


「まぁ女性関係といっても、ディアナちゃんは九歳の幼女だけど……うん?」


 それをいったらレリーナちゃんも十一歳の少女か。

 ……ということは、僕の女性関係って九歳と十一歳の女の子ってことになるの?


 それはどうなんだろう、人として……。

 なんとかローデットさんやジスレアさんも、僕の女性関係に含めてくれないだろうか? どうにかバランスを、バランスをとりたい……。


「あ、けどローデットさんもジスレアさんも、二人とも百歳を超えている可能性があるのか」


 それはそれで、字面だけ見るとおかしなことになる。

 僕の女性関係が、九歳と十一歳に、九十歳と百十歳とかになってしまうかもしれない……。


 ……それは、なんだかすごいな。ストライクゾーンがすごい。というかひどい。



 ◇



 相変わらず頭の中でおかしなことを考えているうちに、森に着いた。


 いつもなら後ろに父がついていてくれるため、気負わず自然体で森に入れるのだが、さすがに今日は緊張する。


「なんとなく初狩りのときを思い出すね」


 あのときもこうやって、ガチガチに緊張していた気がする。いや、もっと切羽せっぱ詰まった状態だったかな?


 まぁいいや、進もう。

 とりあえず、初狩りで大ネズミと熾烈しれつなバトルを繰り広げたあの辺りまで、サクサク進みたいね。あの辺までなら、まだモンスターは出ないはずだ。


「……あのときみたいに、大ネズミが眠っていてくれたらいいのにな」


 大ネズミ――それが今回の目的だ。


 今回僕が一人で森に来たのは、回復薬セットの効果を確認するためだ。

 つまりは大ネズミ――モルモットで実験をするために森へ来た。

 大ネズミを瀕死状態にしてから回復薬を飲ませて、それで効果を確認しようと思う。


 なので、大ネズミを探しながら森を進んでいくつもりだけど……。

 とりあえずメイユルクミーヌ間で出没するモンスターは、ツノウサギ、大ネズミ、トード、ボア――ってところかな? 


 この中から、都合よく大ネズミと会えるのか、会えたとしてもうまい具合に瀕死状態にできるのか、その辺りが難しいところだ。


「なんとなく、前世でやっていたポケットにモンスターを集めるゲームを思い出すなぁ」


 さてさて、うまくいけばいいけど――



 ◇



「あれ? アレクじゃん」


「……うん。久しぶりディアナちゃん」


 ルクミーヌ村に着いてしまった……。


 確かにメイユ村からルクミーヌ村までの森には手強いモンスターもいないし、そもそもモンスターの数が少ない。

 とはいえ、大きく道を外れるのもよくないだろうと思って、真っ直ぐルクミーヌ村方面へ森の中を直進したところ――


 そのまま一度もモンスターに会わずに、ルクミーヌ村へ到着してしまった。


 結果的に、僕は一人でこっそり隣村の幼女に会いに来てしまった……。そんなつもりはなかったのに……。





 next chapter:VS歩きキノコ

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