第4話 リベンジ

 三限終わりのチャイムが鳴る。

 授業が終わりざわつき始める教室で、とおるは教科書をトートバッグにしまっていた。

「あ、佐野君」

 急に話しかけられて手が止まる。その声は最近よく聞く声だった。

「……田宮さんもこの授業取ってたんだ」

「教養科目の中で一番楽に単位が取れるって聞いたから」

「俺と同じ理由か」

「この授業は一人で受けてるの?」

「まあね。友達みんな語学の授業がが被ってるらしくて一人で取る羽目になったんだ」

「私と同じだ」

 透は教科書をしまい終え、立ち上がる。

「じゃあ俺、ちょっと寄るところあるから」

 そう言って透は教室を出ていこうとする。

「待って、佐野君」

 何を言われるか大体予想がついていたのであえて返事はしない。

「サークル入ろうよ」

「……はぁ」

 透はやはりそうきたかと言わんばかりにため息をつく。

「今からそのサークルに行こうとしてたんだ」

「えっ! じゃあ……」

「入るよ、サークル」

 そう言って透は歩き始める。さくらもそれに後からついてくる。

「でもどうして急に?」

「まぁ、色々あって。気が変わったんだ」

「ふーん、そうなんだ」

 二人は階段を下りてキャンパスの外に出る。

「なにをそんな笑ってるんだ」

「嬉しくて。中学の頃のリベンジができるからね」

「リベンジも何も俺が現役の小説家に勝てるわけないだろ」

「でも実際中学の頃は負けっぱなしだったじゃない。このままだと悔しい」

「そんなもんか」

 透は急に足を止める。

「どうしたの?」

「……サークルの活動場所ってどこだっけ」

 キャンパスの道沿いに植えられている青々と茂る桜の葉が、静かに風に揺れていた。

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