15.味方と後ろ盾は大事です 4
モノさんの名前を出すと、お父様は眉の皺を深めました。
それから、不思議そうな顔をして訊ねてきます。
「あの神社には、奉られて言う神などいないはずだ」
「はい。正しく言えば、モノさんはあの神社に元からいたのではなく、あの神社以外に行き場所がなかった為に、あの場所に腰を下ろした――というのが正しいのです。
そして、腰を下ろした結果、不本意ながらこの街の土地神と化しているそうですよ。
ただ、たとえ不本意であっても土地神と化した以上は、責務は果たすべく見守って下さっているとか」
私の説明にお父様は難しい顔をして、しばらく眉間を揉みました。
「そうか……」
やがて、小さく息を吐くと顔を上げます。
「
「まだ分かりません。本来は神がいない場所に神がいるというコトが、歪みを生じさせているという可能性はゼロではありませんが」
実際、大アリなのですが、ここで断言はしません。
何から何までゲームと同じであるとは限りませんので。
「ちッ、奴らの置き土産のようなものか、厄介な」
お父様が囁くよりも小さな声で何かを毒づいてから、意を決するように私を真っ直ぐに見据えました。
「それで、鷲子。お前は何を望む?
ただ過去の話と、能力の話をする為だけに、この場を設けたワケではないのだろう?」
それに、私はゆっくりとうなずきます。
さて、ここからが本題ですね。
「私は――この開拓能力者の覚醒多発事件を追いたいと考えております。
それに伴い発生するだろう暴走能力者による被害者の保護や、暴走能力者の起こした事件の隠蔽工作などをスムーズに行う手段や後ろ盾が欲しいのです」
お父様に真っ直ぐ見据えられながらも、私はきっぱりとそう告げました。
冴内警部という協力者はいます。それでも彼がどこまで力があるかは不明です。
その点、当家はそれなりの影響力を持った家柄ですからね。あまり良いことではありませんが、隠蔽工作や情報統制などに手を出すことが可能なのは大きいのです。
「それはお嬢様がしなければならないコトなのですか?」
「私である必要はなかったとは思います。
ですが、私は気付いてしまいましたし、動きたいと思ってしまいましたから」
それに、動かなければ
正直なところ、本音はこっちですが、そんなこと口にはできません。超能力者が存在してます――なんて話よりも眉唾に聞こえてしまうでしょうしね。
前世のことは機を見てから、お父様と藤枝さんに対して口にしようと考えていますが、まぁそれは今ではないとので、そのうちです。
「いいだろう。鷲子。
この街の治安を守るという観点で見ても、警察だけでは対処できそうにない話だ。光の当たらぬ影で、それをやる者がいるのは悪くはない。
その代わり、いくつか条件がある」
お父様がもともと厳つい顔をより厳つくしかめながら、告げます。
「まず一つ。お前自身の命を粗末に扱うな。
二つ。超能力が用いられた事件に関わった時、解決未解決問わず報告するコト。
三つ。俺はお前の超常識の話を信じたのだ。だから最後まで俺を信じてくれ。お前が道を踏み外さない限り、俺は最後までお前の味方だ」
……三つ目が些か不穏な雰囲気です。
でも、なぜわざわざそんなことを口にしたか――という点に関しては、元々のゲーム設定から鑑みて推測は可能ではありますね。
それにモノさんの話をした時の表情。
モノさんと、開拓能力者が増えている今の状況に対して、もしかしたら心当たりがあるのかもしれません。
恐らくは――いわゆる前日譚に当たる部分に関わっている何かがあるんでしょう。
それが表沙汰になった時、私がお父様を信用できなくなる可能性が僅かでもあるからこその、最後の条件。
ですが、私は知っています。
先日、前世の記憶を思い出した時の頭痛のお見舞いに来てくれたお父様を。そのときに漏らしたお父様の本音を。
だからこそ――
「わかりました。その条件を受け入れます」
私は、迷うことなく、そう答えるのでした。
=====
【TIPS】
十柄邸には、藤枝さん以外にも、もちろん家のコトをしてくれている人たちがいるぞ。
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