手がかりを探す準備

 朝。さっそくリビングにやってきた私は、既に起きてテレビを見ている母親の手からリモコンを奪う。まずはニュースを見て情報収集しないと。


「あー、せっかく母さん、バラエティー番組見てたのにぃー」

「知らん。ニュース見たらすぐにチャンネル戻すから、ちょっとだけ待って」


 文句を言う母親にそう言って、ニュース番組に切り替える。ニュース番組は、やはりWFOの話題で持ちきりだった。


 ログインしていたはずなのに強制ログアウトさせられ、ログインできなくなった人、ログインしてからずっとそのままの人。様々な状態の人々がいる状況は、変わらず。そして報道によると、ナイトメア・ソフトウェアは未だ、不具合の原因を突き止められていないようだということが分かった。


 結局のところ、分かっていることはさほど、ゲーム内で得た情報と変わってない。


「あとは、シュウさんが会社で集めてきてくれる情報に期待するのと……」


 そう言いながら、パソコンを開く。あと、私にできるのはインターネット上に落ちている情報を拾い集めること。シュウさんはSNSに疎いから、SNS上での情報収集は私がやっておくべきだ。他のネットの情報なら、シュウさんも収集してくれるかもしれないけど。


 早速、ポイッターを起動する。ポイッターのトレンド欄も、ほとんどがWFO関連のものばかりだ。一つ一つ、チェックしていく。


「今日、会う約束していた友達と連絡がつかない」

「今日会う約束を取り付けていた担当が来ない」


 仕事とプライベート、様々な内容で、消息不明な人が多々いることが分かるポイートがあふれている。


「電話しといたわよ。ニュースで取りざたされてるゲームやってたからもしかしたら……、って言葉を濁しといたら、それは仕方ないですねって納得してもらえたわ」


 会社に電話してくれたお母さんがスマートフォン片手に不機嫌そうに言う。


「ありがとう、助かった」

「でもいいの? 結果的に嘘ついてることになるけど」

「ばれなければどうということはないから」


 それよりも、今はやらなければいけないことがある。ゲームではのんびりしたかったけど、そんなこと言ってる場合じゃない。


 何か手がかりはないかな。クリアした人はたぶん、私たちみたいに情報は調べるけど、発信はしないと思うんだよね。何か見つかるといいけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る