ロビーにて
「確かに、そう言ってましたね」
ずんだ餅さんが入り口の扉付近を往復する。すると、再び機械音声が流れる。
『ヨウコソ。ココハ、アクムノ、カイシャ、デス』
「いやああああ」
「やめてええええ」
再び私とシュウカさんの声が重なり合う。
「そこの女子陣、うるさいですよ」
ずんだ餅さんが、びしぃっと私たちに向かって人差し指を向ける。
「ずんだ餅さんこそ、性格悪い! 人が怖がってるのに、何度も聞かせるなんてっ」
シュウカさんが言う。
「あくまで他のアナウンスが流れたりしないかなって思っただけですよっ」
ずんだ餅さんもムキになって言い返す。
『ああ、それなら。……奥に何か見える』
シュウさんが見ているのは、私が見ている視界の中の映像。確かに、カウンターのようなものがあって、そこに、誰か『居る』。
「ずんだ餅さん、ちょっと見てきてくださいよっ」
ずんだ餅さんの背中を、シュウカさんと二人で押す。
「いやいやおかしいでしょうよ! 本来は、一番強いシュウカさんが行くべきでしょうよ!!」
嫌がるずんだ餅さん。けれど二人から背中を押されてずんずん前へ前へ。仕方なしに、自分で歩き始めたずんだ餅さんは、突如一気にカウンターとの距離を詰めた。
そう思ったら、今度は私たちの近くまでダッシュしてくる。それで私たちの前で急ブレーキを踏んだかと思うと、余裕の表情で一言。
「……なんのことはない、ロボットでした」
「ロボットさんですか」
そう言われて、納得する。確かに、ここにずーっとNPCかもしれないけど、人を置いとくのはなんかなぁって感じだもんね。
最近現実世界では、ロボットがホテルの受付業務をやったりできるというし、無人コンビニが実装されるとかなんとか言われている。だから別にゲーム内のロビーの受付に、ロボットさんがいても不思議ではないのかも。
「よしそれじゃ、みんなで近づいてみましょう」
今度は、三人仲良く、カウンターの前まで歩いていく。三人いれば、怖くない。
『……そのロボットが急に、手元からマシンガンでも取り出したら終わりだがな』
その言葉に、私達の足取りがぴたりと止まる。
『……冗談だ』
シュウさんのその言葉、まったく冗談に聞こえないんだけどね。先ほどよりはスピードを緩めつつも私達は進む。
『ヨウコソ、アクムノ、カイシャヘ。エレベーターデ、ウエニ、ドーゾ』
相変わらずの機械音。ロボットが見ている方を見ると、そこには確かに、エレベーターがあった。
「……実はここだけが安全地帯でさ、上の階に上がったら最後、モンスターだらけのダンジョンで、クリアするまで帰れませんとかいうシステムかもよ」
シュウカさんまで、脅かしにかかってくる。もう。
「とにかくここまで来たんです、上がって見ましょう」
ずんだ餅さんの言葉で、私達は、エレベーターに飛び乗ったんだ。
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