アイテム完成!
大鍋奉行さんは、カンナさんのお店の商品いくつかを、先に大鍋に放り込んだ。あれ、でもアイテムが大鍋の底に当たった音がしない。
それから、大鍋奉行さんも大鍋の中にいそいそと入っていく。え、大鍋に戻るんだ。
鍋からちょこんと顔をだして、大鍋奉行さんはにこっと笑う。
『ちょっとだけ待っててね』
そう言うと、大鍋の中へと潜っていった。それからしばらく、ガサゴソドンガラガッシャンと、色んな音が鳴り響く。
「大丈夫なのか……?」
シュウさんが顔をしかめる。私は肩をすくめた。すると突然ポーンと音がして、大鍋からアイテムが飛び出してくるのが見えた。
飛び出してくるのは見えたけど、次の瞬間には私の頭に命中。
「いたっ」
シュウさんが床に激突しそうになっているアイテムをつかむ。危なかった。アイテムは、落としたら割れてしまいそうな瓶に入った液体。これ、何だろう。
すると、大鍋奉行さんが大鍋からピョコンと飛び出してくる。
『ごめん、思ったより飛んじゃったー』
てへへ、と照れ臭そうに笑う。わざとじゃないなら仕方がない。殺気を感じなかった私も悪いし。
『できたよー、あるじが欲しがってたアイテムー』
え、さっき飛んできたあのアイテム。あれが、私が思い描いていたアイテム!?
「……もうできたのか」
『最近、アイテムの調合してなかったからさー、時間かかっちゃったけどー、効果は保証できるよー』
大鍋奉行さんは、偉そうに腕組みなんかしちゃってる。でも姿がかわいいから、様になってない。ただ、かわいいだけ。
『あるじから聞いた内容をー、自分なりに解釈してー、作ってみたー。これの使い方知りたいー?』
「はい、聞きたいです」
『よーし、じゃあ説明しちゃうよー』
大鍋奉行さん、肩を揺らしながら私にアイテムの説明を始める。
『効果時間は、最大約1時間だよー。ただ、これから説明する最後の仕上げの作業のできによって、効果時間が左右されるから慎重にねー』
「最後の仕上げの作業……」
私は言葉を繰り返す。確かに、私がアイテムのアイデアの着想を得た児童向けファンタジー小説に出てきたアイテムも、最後の仕上げが必要だった。そこは同じなんだ。
『その最後の仕上げの作業のやり方を説明するねー、よーく聞いてねー』
私はごくりとつばを飲み込む。難しい作業じゃないといいけど。しかも、その作業の質によって、効果時間が変わるって言ってたし。大丈夫かな……。心臓がドクドクと早鐘のようになり始める。うん、難しい作業なら、手先が器用そうなシュウさんに頼もう!
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