街の探索


 私とシュウさんは、今度は街の探索に出かけることにした。そんなにあちこち街の中を出歩いたことがないから、これまた新鮮な気持ち。


 ゲームに初めてログインした日に、道具屋のリサーチをした日が一番動き回ったかもしれない。その次に、飲食店に出現した詐欺師らしき人たちを見回るのにお店回りした時期が上がってくるかな。


 街を見て回りながら、お店があれば立ち寄ってバクハツの実を販売しているかどうかを確認していく。そして、販売しているお店には印をつけて、値段をメモしていく。すごく地道な作業だけど、こういう地味なことは嫌いじゃない。


 同じ作業を繰り返すのは、好き。臨機応変に対応するのは苦手だけど。街の地図が少しずつ書き込みが多くなってくると、なんだか嬉しくなる。学校の教科書やノートもそうだった。もともと印刷されている部分だけじゃなくて、できるだけ書き込みだったりマーカー線だったり、何かしら「がんばった」感じが出したかった記憶がある。


 シュウさんは何も言わずに私についてきてくれている。必要に応じて、隣のお店のバクハツの実の販売の有無や値段を確認してきてくれる。ある意味での共同作業だ。作業分担すると、仕事も早く終わるもんね。


 あちこち街の探索をしながら、シュウさんはぽつぽつと自分の話をしてくれた。彼は、私と同じくゲームの好きな人だった。小さい時にポケットゲーム機を買ってもらったことがきっかけでゲームにのめりこんだらしい。


「……自分もゲーム作りに携わりたい。そんな気持ちを持った」

「それで、ゲーム会社に就職されたんですね」

「……ああ。そんな折、今回のVRMMOの企画が持ち上がってな」


 シュウさんは目を細める。


「スカウターという役職である程度ゲームをやり込める人間を社内で募集することが決まった」

「それでシュウさんはそれに応募し、合格したと」


 彼はそれを聞いて頷いた。


「以前話した、『仕事』としてゲームにログインしている人間、そのうちの一種類がこの『スカウター』だ。この役職は、必要に応じて『特別スキル』を持った人間のスキルのはく奪を行い、必要に応じて『特別スキル』を持った人間を援助し、社員への雇用をバックアップしたりする」


「他にも、社員さんが別の役職でこのゲームに入り込んでいる場合があるんですか」

「そうらしい。……わたしも詳しいことは知らないが、これだけ大規模なゲームだ、他にも色々と見守らなければならないことがあったりするのだろう」


 シュウさんが腕組みをする。それから少しだけ微笑んで私を見る。


「……しかし自分のスキルアップのため、これだけ時間を費やすそちらと出会えて、本当によかったと思う。社員雇用の件しっかり対応してくるから、期待せず待っていてくれ」


 そう言われたら、期待しちゃうよね。というか、シュウさんのリアルが気になり始めちゃった。会社でのシュウさんの立ち位置ってどんな感じなんだろう。


 私はそんなことを考えながら、お店周りを続けた。

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