新たな需要


 私のメールに、すぐカズアキさんから返信が来る。よかった、カズアキさん、まだゲームにログインしてたんだ。


『こんな遅くまでお仕事、ご苦労さん。それじゃ、今からそっちの店に向かうようにするから、ちょっと待っとってな』


 私はその返事を確認すると、店を見渡した。そういえば、最近のカンナさんのお店の客足はどうなんだろう。私は、店の商品を整理しているカンナさんに声をかける。


「カンナさん、最近はどうですか」

「お客さんのことかい? サランちゃんのおかげで、少しずつ増えてきてるよ。ただ、やっぱりまだまだ安い商品を提供している店の方が売れているのは事実だねぇ」


 うーん、広告力が足りないか。私は思う。以前の自分の薬草の検証で、プロが作ったものより、素人が作ったものの方が熟練度の関係上、効果も薄いことは証明されている。でも、それを世間一般に知らしめるだけの「告知力・広告力」がない。だから、どうせ効果なんて一緒だし安いところで買うべきだろうという結論を下されて、街の中心地に近い利便性のいい店の中で、一番安い店で購入されてしまう。値段の安い薬草なら私が作った薬草を店先に出しているものの、それを売るだけのやっぱり「告知力・広告力」がない。


 なんでもCMだったり、SNSで話題になったりと何かしらで不特定多数の人間に知ってもらわないと、なかなかお店に来てはもらえないんだよね。これは、困ったなぁ。


 私が、ヤキモキしているとカズアキさんがやってきた。


「邪魔するでー。遅うなってごめんな、サランちゃん」


 カズアキさんが私に笑いかける。私も会釈を返しながら、カズアキさんの方へ歩み寄る。


「こんばんは、カズアキさん。夜分遅くにすみません」

「かまへん、かまへん。どうせ、大した用事もあらへんし」

「これが、データの入った腕時計です。そしてこちらが、コピーデータの入っているカズアキさん用に作ったブレスレットです」


 私が社員さん用に渡す用の腕時計とカズアキさん用に作ったブレスレットを手渡すと、カズアキさんは嬉しそうに言う。


「いやー、ほんま、助かったわ。これでお客さんに日頃のご愛顧のお礼ができるってもんや。お礼に、こっちで何か手伝えることやったら、いくらでも手伝ったるから、いつでも言ってな。……ん? どないしたん」


 私は、少し考え事をしていた。カズアキさんに何か頼めそうなことがあった気が……と思っていたんだ。そして思い出した。


「そうだ、カズアキさん。1つお願いがあるんです」


 そう、カズアキさんは私も所属しているギルドマスター。ギルドなら、何人かは少なくとも在籍している。まずはその人たちにだけでもここで道具を買うようにしてもらえれば、顧客が増える。そしてそのギルドメンバーに友達がいれば、そこから伝播していく。これは、いいアイデアなんじゃないかな!?

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