一件落着?

 仕事が終わり、私は寝る準備を済ませると、ヘッドギアを装着する。寝る準備を先にしてからログインしないと、向こうでは時間の間隔がないから。


 今までにも何度か経験がある。すごく面白いゲームを夜、ベッドの上で寝転びながらやっていたら、いつの間にか外から明るい光がもれてた、なんてこと。


 あの頃は、仕事じゃなくて学校や大学だったからまだいい。でも、さすがに仕事に出勤するのに寝不足は自分なりに困る。仕事でミスしたら怒られるからね。


 私は、目覚まし時計を2時間後にセッティングして、ゲームにログインする。目覚まし時計が鳴ったタイミングが、寝る時間。これ以上遅くまで遊んでると、明日の仕事に影響が出る。


 ゲームにログインすると私はまず、アイテム欄を確認する。私が昨日、作ったあのアイテムたち。詐欺師さんらしき人たちが詐欺をできないようにするために作ったアイテム。あれが作動したか確認しなくちゃ。


 私はアイテム欄を見てとても喜んだ。昨日、私が詐欺師さんらしき人に盗まれたアイテム『一式装備:瞬装備(呪)』と、『瞬剣(呪)』。どちらも、正常に作動している。そして、詐欺防止数が表示されている。


 詐欺師さんは、見た目は自分たちが普段詐欺に使っているアイテムと変わりないこのアイテムを、そのまま詐欺に利用すると考えた。


 しかもこのアイテム、他の詐欺用アイテムと一緒の空間に置くと、全部同じ効果が付与される仕組みに設定してある。だから、もしかしたら私が作ったオリジナルの『一式装備:瞬装備(呪)』と、『瞬剣(呪)』だけでなくて、他にこのスキルが伝染したアイテムもまた、詐欺を防いでくれるから、そのアイテムが防いだ数も、ここに表示される仕組みになっている。


 よかった、順調に詐欺を防いでくれてるみたい。あとは、本来の目的であるセナさんの詐欺が解決することを祈るだけだね。


 そんなことを思っていたら、セナさんからチャットが飛んできた。


『なんか、よく分からないけどあたしのお金、全部返ってきた。サランさん、いったい何したの』


 おお、どうやらうまく行ったみたい。私が昨日、セナさんに送ったアイテム。それは、『セナさんのお金を奪った詐欺師さんが近くを通ったら、自動的に反応し、盗られたお金やアイテムを回収する』というアイテム。


 それが作動したってことは、セナさんの持ち物は、無事に返ってきたってことだ。私は、セナさんにチャットを送る。


『うまく行ってよかったです。詳しい事情はまた後日話します。そのアイテム、返してもらってもよろしいですか』


 私がチャットを送ってからすぐ、セナさんからアイテムが返却された。そのアイテムには、しっかりと、IDが表示されている。これが、セナさんが詐欺にあった人のID。これと私が見つけた詐欺師さんのID。どちらも運営さんに送れば、一件落着。詐欺師さんは、減るはずだ。



 

 

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