犯人を追いかけて
詐欺師さん?に装備を渡してみる
でも、すんなり渡してしまうと逆に怪しまれる可能性がある。もう少し粘ってみるか。それでもし逃げられちゃったら困るけどまぁ、顔は覚えたし。
私は、男の人をまっすぐ見つめて言う。
「えー。でも見ず知らずの人に大切な武器も防具も預けるのはちょっと……」
私が渋っているのを見て、男の人が畳みかけてくる。
「大丈夫だよ。何の保険もなしに大切な装備を貸してくれとは言わないから」
そして、私の目の前に、私が持っているのとは別の武器と防具を置く。私がその武器と防具を凝視すると、自動的にポップアップ画面が立ち上がってくる。
『一式装備:瞬装備。武器:瞬剣』
剣と防具一式かぁ。防具は、今持っている装備より防御力が高いし、剣も見た目もいい感じで攻撃力も高め。これがもらえるなら、まぁ今持っている防具も武器も、盗まれても問題ないかって思えるレベル。
「キミの武器防具を返すときまで、この武器と防具を預けておくから。キミの装備と交換でこれ、返してくれればいいから。こっちの方が装備としての価値は高いし、悪くはない話でしょ」
男の人の言葉に、私は頷く。うん、確かにこの話だけ見れば、悪くない話。じゃあ、問題はこの後か。私は、嬉しそうな顔を作って、男の人が出してくれた装備を腕に抱える。
「明日、同じ時間にここへ来てくれたら、その時にキミの装備を返しに来るよ。それじゃ」
そう言うがはやいが、男の人は私の装備を持ってそそくさと去っていった。男の人が店を出て行ったのを確認していると、ヒナタさんがやってきた。
「まさかこんな早く、詐欺師さんが引っかかるとは思わねぇよな」
ヒナタさんが苦笑する。私も苦笑い。ヒナコさんも私の向かい側に腰を下ろすと言った。
「びっくりですよね」
「まぁ、まだ本物の詐欺師さんかどうかは分からないですけどね」
私はそう答える。明日同じ時間にここに、さっきの男の人が私の装備を返してくれたら、それは詐欺じゃないもん。でも。
でも、どうやらセナさんが引っかかった詐欺師さんとは別人みたい。セナさんの話だと、一瞬で装備を返してくれたけど、装備が別物に変わってたって話だしその場でお金取られたって言ってたから。
そうなってくると。セナさんを騙した詐欺師さん以外にも、もしかしたらたくさんの詐欺師さんがいるのかもしれない。これは、非常に困った。
とりあえずセナさんの探している詐欺師さんではない可能性は高いけど、このままほっておくわけにもいかない。今は、私にできることを着実に進めていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます