2人に協力をお願いする
「見せるのは、構いませんが……」
私は、手帳を胸に抱きながらヒナタさんに向かって言った。
「それには1つ条件があります」
私の言葉に、ヒナタさんが顔をしかめる。
「先にお伝えしておきます。私がこのお店に来たのには、お菓子を食べる以外の目的があったのです」
「アイデアを得るためでもなく、ですか」
ヒナコさんが首をかしげた。私は言う。
「ええ。私がここへ来た本当の理由をお話します。手帳もお見せします。ですから、私に協力してほしいのです。お2人は、このお店について詳しいんですよね」
私の言葉に、ヒナコさんは頷く。
「そう……ですね。とはいえ、わたしたちも、そう多くは知りません。このゲームの発売日から、ここへお世話になっていますが、まだまだ知っていることの方が少ないとは思います」
ヒナコさん、謙虚な人だなぁ。私は感心する。そんな彼女の横で、ヒナタがふんと鼻をならす。
「オレは、ヒナコと違って、この店のことを知り尽くしているぜ」
ヒナタさんは、ちょっと調子がいい人だね。
「謙遜されるヒナコさん、そして自分に自信のあるヒナタさん。お2人にだからこそ、お話します」
私は、ヒナコさんとヒナタさんに向き直って、今までの経緯を話し始めた。私に言霊・物語付与のスキルがあるということ。そしてそれと同様のスキルを悪いことに使い、騙された人と出会ったこと。
そして、これはシュウさんにもらった情報だけど、それと同じような被害を受けた人たちが、他にもいるようだということ。それらすべてのことが、カフェで起きていること。私達はそれを解決するために、それぞれカフェで見張ることにしたこと。
全ての話を聞き終わった時、ヒナコさんとヒナタさんはお互いの顔を見合わせた。ヒナコさんは、小さな声で言った。
「そんなことが……。実はわたしたち、今日カフェブースに出て来たばかりなんです」
「そう。オレたち、今まで厨房かバックヤードにこもってたからな」
ヒナタさんも付け足す。ヒナコさんが俯く。
「わたし、作ることは好きですが人から意見を聞くのは苦手で……。気に入ってもらえなかったらどうしよう。こんなの、誰でも作れるって言われたらどうしようって不安で」
ヒナコさんの言葉に、思わず私は即答する。
「分かります」
「え」
私の言葉に、ヒナコさんが不思議そうな顔をする。
「私がアイデアを集めているのは、物語を書くときに役立つアイデアがあるかもしれないと思っているからです。どんな時にどんなアイデアが使えるか分からないですから」
そんな私が仕事を始める前、今より小説をたくさん書いていた時、いつも思ってた。気に入ってもらえるかな、とかどんな評価が来るかなって心配になっていた。
「でも今日、サランさんに出会えて、わたしのアイデアを素敵って言ってもらえて自信を持てました。あなたと出会えたのは、この話があったからこそです。ですから」
ヒナコさんはきっぱりと言った。
「ヒナタさんはどうか分かりませんが、わたしは、あなたに協力したいと思います。それにこのお店にそんな人が来て、お店の評判が下がったら困りますから」
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