第121話 後始末

 その日は、そのまま屋敷に戻ると、皆んなで夕食を囲む。


「いやぁ、いつもながら美味いな」


 今日は、中華風の料理が並んでいた。


「恐縮です。お口に合って良かったです」

「うん、さすが元王宮の料理長だ」


 綾瀬家の料理人も優秀な人材が揃えられていた。

樹は、夕食を食べ終わると、食後のコーヒーを啜っていた。


「とりあえず、一件落着したと言っていいのかな?」

「いいと思いますよ。お疲れ様でした」

「アリアもお疲れ様」


 アリアは、樹の正面のソファーに腰を下ろしていた。


「ありがとうございます」

「俺は、風呂入って寝るよ。アリアも早めに休めよ」

「お気遣いありがとうございます」


 樹は、立ち上がると、風呂場へと向かった。


「やっぱ、風呂場いいよなぁ」


 広い湯船に浸かりながら、そう呟いた。

20分ほど浸かると、樹は風呂を出て、自分の部屋へと向かった。


「久々に暴れるとやっぱ、疲れるよな」


 ベッドに倒れ込むと、やがて意識を手放した。


 翌日、太陽の光で目が覚めた。


「朝か……」


 樹は起き上がると、いつものコートを見に纏った。


「おはよう」

「おはようございます」


 セザールに挨拶し、アリアと共に朝食を取る。

何も変わらない日常だ。


「今日、王宮に行って、後始末をしてくる」

「かしこまりました。ご一緒しましょうか?」

「そうしてくれると助かる」

「承知しました」


 朝食を取り終え、ひと息入れた後、アリアと共に王宮へと向かった。

 王宮に到着すると、従者により、応接間へと通された。

そこで、しばらく待っていると、陛下が入って来た。


「待たせたな」

「いえ、お気になさらず」


 陛下は、樹の正面のソファーに腰を下ろした。


「話は、ギルマスから大体聞いている。ご苦労だったな」

「ありがとうございます」

「まさか、こんなに早く片付くとはな。君たちに頼んで正解だったわ」


 陛下は上機嫌に言った。


「ありがとうございます」

「報酬の件だが、いつも通りの振り込みでいいか?」

「はい、よろしくお願いします」


 樹は軽く、頭を下げた。


「それで、前々から言おうと思っていたのだがな」


 陛下が切り出した。


「はい、何でしょうか?」

「君たち二人は、もう、Sランクという枠に収まりきらなくなって来たと思ってな」

「しかし、Sランクがギルドの最高ランクですよね?」


 Sランクはギルドと国が認める為、数は少ない。

その分、実力は確かなものだ。


「そうなんだが、樹と、アリアのために、最高ランクの上限を上げることが決まった」

「なるほど……話は分かりました」

「来週には、二人のランク昇格が決定するから、よろしく頼む」

「承知しました」


 それを聞くと、二人は王宮を後にした。


「何か、凄いことになってきたな」

「はい、まさか、Sランクを超えることになるとは思いませんでした」

「俺もだよ」


 二人は、苦笑いをしながら、屋敷までの道のりを歩いた。

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