第103話 オリエンス国王

 貴族用の門からオリエンス王都へと入る。


「姫、お疲れ様です」


 検問所の騎士から勢いよく敬礼される。


「あの、そちらの方々は?」


 騎士は樹たちに目を向けた。


「綾瀬だ。護衛で来た」


 樹とアリアはギルドカードを提示した。

 

「し、失礼しました! 貴女たちが有名な樹様とアリア様でしたか」

「はい、お疲れさん」

「お疲れ様です」

「ご苦労様です!!」


 もう一度敬礼をすると門を通してくれた。


「あれが王宮です」


 ミアが指差した。


「デカいな……」


 そこには西洋風の城があった。

かなりの大きさだが、王宮ならこんなものなのだろうか。


「さ、どうぞ入ってください」


 王宮の前に馬車は止まり、玄関の扉を開いた。


「「「「おかえりなさいませ。お嬢様」」」」


 使用人たちがずらっと並び、頭を下げる。


「ただいま戻りましたわ」

「おかえり」


 中央の階段からミアと同じ金髪のガッチリとした体格をした男性が降りてきた。


「お父様! ただいま戻りましたわ」

「ああ、ちょっとは成長したようだな」


 そう言ってミアの頭を撫でた。


「おっと、自己紹介が遅れましたな。私はエクムント、オリエンス国王だ。君たちが樹くんとアリアくんだね。道中の護衛、感謝する」


 エクムント陛下が頭を下げた。


「綾瀬樹です」

「アリアと申します」

「とりあえず、頭を上げて下さい。一国の王が易々と頭を下げるもんじゃありませんよ」

「ありがとう。それで、そちらのお嬢さんは?」


 エクムント陛下がシルフィルに目をやった。


「あぁ、この子は風の大精霊のシルフィルです。私の契約精霊ですよ」

「噂で耳にしていましたが、まさか本当に大精霊と契約してるとは……」

「シルフィルと申します。我マスター樹様の契約精霊であり、風の全精霊を司っております」


 シルフィルが丁寧モードに入っていた。

なんか、懐かしい気がする。


「これはこれはご丁寧に。まあ、樹くんたちも上がってくれ」

「では、お言葉に甘えて」


 樹たちは応接間へと通された。

樹の正面にエクムント国王、その左にミア、両隣りにはアリアとシルフィルが居る。


「人身売買組織の件ではお世話になりました」

「何、気にするで無い。うちとしてもあのまま放置は出来なかったしな。無事に片付いたようで何よりだ」

「それで、また陛下に折り行ってご相談があるのですが」


 樹が切り出した。


「何だね? 言ってみなさい」

「これは、姫さまの身の安全を考えて、黙っていたのですが、昨夜、襲撃に遭いました」

「あぁ、報告は聞いているよ」


 エクムント陛下の表情が変わった。


「襲った連中ですが、王室親衛隊、もしくは親衛隊になりすました連中でした」

「何!?」


 陛下もミアも驚いた顔をした。


「確かに、最近、親衛隊の動向がおかしい気はしていたんだ」

「念のため、王室親衛隊とは少し距離を置いた方がよろしいかと思います。しばらくは私もこっちにおりますので、出来る限り協力します」

「ありがとう。ところで、君たちは今日からの宿は決まっているのかね?」


 陛下が笑顔を向けて言った。


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