第101話 謎の敵襲

 男たちと樹たちの間に夏特有の生暖かい風が流れた。

男たちは剣を抜き、樹とシルフィルに向かって構えた。


「おぉ、やる気満々ですね」

「お前らは武器無いのか?」

「気にすんな、ちょっとしたハンデだ」


 樹は不敵な笑みを浮かべた。


「俺たちを舐めるなよ」

「そんな汚い顔、誰も舐めないから安心しろ」

「貴様ぁ! お前らやっちまえ!」


 一人の男の剣が樹に向かって振り下ろされる。

しかし、樹はそれを躱す素振りも見せない。


「うん、いい剣筋だね」


 樹は人差し指と中指の間で剣先を挟んでいた。


「な、何!? 何故、剣が動かない」

「そりゃ、俺が動かせないようにしてるからだよ」

「そ、そんなバカな……俺の剣を……」


 男は唖然としていた。


「さて、反撃開始といこうか」

「おうよマスター」

「吹っ飛べ」


 樹はシルフィルにより強化された拳を男の頬に打ち込んだ。

見事なクリーンヒットだ。

男はその場に倒れて起き上がる事は無かった。


「次はどいつだ?」


 拳を握り直し、樹は男たちに尋ねた。


「お、お前ら全員でかかれー!!」


 その言葉で次々と男のたちが剣を向けてくる。

樹の戦闘スキルはもちろんだが、シルフィルの対人戦闘スキルには樹も少々驚かされた。


 剣を寸前で躱し、懐に潜り込む。

そこで男の足をかけて倒し、拳をみぞおちに打ち込む。

とても、シルフィルの容姿から想像できるものでは無かった。


「じゃあ、俺も本気出しちゃおっかな」


 樹はその場で二回ジャンプした。


「来なさい」


 挑発すると男は簡単にその挑発に載った。


 剣が振り下ろされるタイミングを見計らい、剣に向かって蹴りを入れる。

すると、剣は真っ二つにへし折れていた。


「そ、そんなのありかよ……」

「あぁあぁ、もっと丈夫な剣使わなきゃね」


 口元は笑っているが、目は笑っていない樹にどことなく恐怖を覚える男。


「よいしょっと」


 強烈な回し蹴りが男の顔面に入った。

そのまま10メートルは後ろに吹っ飛ばされた事であろう。


「後はお前だけだがどうする?」


 6人いた男の子たちも気づくとリーダー格の男1人となっていた。


「お、お前たち一体何もんだ? ただの護衛ではあるまい」

「綾瀬樹、この世界で剣を撮る者なら一度は聞いたことくらいあるだろ。それに、お前らこそなんだ? ただの刺客にしては剣筋が良すぎる」

「……!? 聞いた事がある。ウェールズ王国に突如現れた世界最強と謳われた冒険者にしてウェールズ魔術学院学院長、綾瀬樹……」


 それだけ言うと男は羽織っていた黒いローブを脱ぎ捨てた。


「その鎧……やはりか」


 樹はその紋章に見覚えがあった。


「王室親衛隊か」

「察しがいいな。その通りだ」

「何故だ? 何故王室親衛隊が王女を襲う? 王室に絶対忠誠のお前らが」

「いずれ分かる時がくるさ」

「どういう意味だ?」


 王室親衛隊の男が不敵な笑みを浮かべたと思ったその時、男は暗闇の中に姿を消した。


「消えた……だと。シルフィル奴の居場所掴めるか?」

「ダメだマスター、反応が無い」

「こっちもだ。とりあえず、こいつら風の拘束をしといてくれ」

「了解」

「それと、この事はまだ姫さんには秘密にしておこう」

「分かった」


 まだ、上京が掴めていない中、無駄に恐怖心を煽ってしまうかも知れない。

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