第85話 新たな難敵

 王国各地で魔獣から操る針が刺さった魔獣の出現が報告されて数週間が経過した。


「また、例の針か……」

「これは、いよいよのんびりしては居られないかもしれませんね」


 樹、アリア、シルフィルは屋敷のリビングで地図を広げ、魔獣が現れた所に印を付けていた。


「これ、だんだん王都に近づいてきてないか?」

「確かにそうですね。魔獣も強くなっているという事ですし、警戒しなければならないかもですね」


 樹とアリアは真剣な顔をしていた。


「なぁ、マスター。いっそのこと親玉を叩けばいいんじゃないか?」

「あのなぁ、それが出来ないからこうやって考えているんだろうが!」

「ん、出来るぞ」


 シルフィルが胸を張って言った。


「は?」

「だから、出来るって」

「どうやってだよ! まず、もっと早く言えや!!」

「お、落ち着けよマスター。恐らく魔獣を操っているのは魔人族だ」

「魔人族……?」


 樹が初めて聞く種族であった。


「そんな種族聞いた事がないぞ」

「まぁ、マスターが知らなくても無理はない。ここ最近、確認されて無いからな」

「で、その魔人族ってのはどこに居るんだ?」

「おそらく、ここだろうな」


 そう言ってシルフィルは地図を指差した。


『トリーア大迷宮』


「また迷宮かぁ……」

「しかも、ここはウェールズ王国の3大迷宮のひとつですね」

「お、そうなのか」

「はい。ウェールズ王国には、私たちが先日攻略したイエーナ大迷宮、トリーア大迷宮、ボフーム大迷宮があり、3大迷宮と呼ばれています」


 アリアが説明してくれた。


「なるほどな。その3大迷宮の一つが魔人族の根城って訳だな」

「マスターの言う通りだ」

「とりあえず、ここに行ってみるか」

「そうすべきですね」

「おうよ、マスター」


 皆、やる気になっていた。


「早速迷宮へって言いたいところだが、またSランク指定迷宮か」

「はい、ギルマスか国王陛下の許可が必要ですね」

「ギルマスに報告しに行くか。元々はギルドの依頼だ」

「そうですね」

「面倒だが、マスターについてくよ」


 樹たちはギルド本部へと向かった。


「ギルマス居るかな?」


 樹は受付にいた職員に声をかけた。


「あ、はい。こちらへどうぞ」


 案外すんなりギルドマスター室へと通された。


「まぁ、座りたまえ。何用かな?」

「はい。例の針の刺さった魔獣について見当が付きましたのでそのご報告と制圧許可を頂きに参りました」

「ほう、もう見当をつけるとは流石は風の大精霊様だな」


 ギルマスは目を細めて笑った。


「それで、どこなんだね?」

「ここです」


 樹は地図を広げて指差した。


「ほう。トリーア大迷宮か……」

「シルフィルが言うのでここで間違えないかと」

「分かった。通行許可証をだそう。制圧を許可する」

「ありがとうございます」


 それからギルマスから迷宮への通行許可証を受け取ると、懐に入れ、ギルド本部を後にした。

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