第72話 新たなメイド

 リビングにアリアとシャルも集まってきた。


「へぇ、異能者ですか凄いですね」

「はい、なんか強そうです!」


 アリアとシャルも樹と似たような反応を見せた。


「え、私が怖く無いんですか?」

「怖い? 何故ですか?」

「むしろカッコいいですよ」


 アルマはキョトンとした顔をしていた。


「だから言ったろ? 誰もアルマを責めないって」

「はい。まるで夢の中のようです……」


 そう言ってアルマは目に涙を浮かべた。


「異能者って世間からの風当たりは強いかもしれないけど、その力は人を助ける為に神から授かったものだと思うんだ。俺だってアリアだって世間からは桁外れのスキルを持ってる。それでも人を助けるのに全力を注げば案外、誰かがちゃんと見ていてくれるもんだよ」


 そう言って樹はアルマの頭を撫でた。


「あ、ありがとうございます……」

「泣くなよ。お前は強い。守りたいものがあっても守る術が無い人もいる。でも、俺たちは違う。その力がある。ちょっとずつでも認められるように頑張ろう。その為の力ならいくらでも貸してやる」


 樹は真剣な目をして言った。


「本当に、ありがとうございます」

「気にするな。アルマには今日からメイドとして働いてもらう事になるが、構わないか?」

「はい、もちろんです。どのまでもついて行きます!」

「そんな大げさな。アリア、メイドの仕事教えてあげてくれ。それとこれ」


 樹はそう言うとアルマにメイド服を渡した。


「アルマ用のメイド服だ。これ着て頑張って働いてくれたまえ」

「承知しました」


 早速、使用人室でメイド服に着替えたアルマはアリアに仕事内容を教えてもらっていた。

さすがと言うべきか、アルマはすぐに仕事を覚えてしまった。


「また、冒険者にしませんよね?」


 セザールがその姿を見ながら、樹に小声で尋ねた。


「しないしない。多分ね」

「全く、どうしたらこう色々抱えた者を拾って来れるのか。それが旦那様の魅力でもあるのですが……」


 セザールは小さくため息をつくと肩を落とした。


 それから数日が経過した。

アルマはすっかりメイドが板に付いてきた。


「旦那様、王宮からお手紙が届いております」


 そう言ってアルマが部屋に入って来た。


「ありがとう。そこ置いておいて」


 樹は大量の未決済書類と格闘していた。


「頑張るのはいいですが、あまり根を詰めないで下さいね。紅茶も置いて置きますね」


 そう言ってカップに入った紅茶を机の上に置いた。


「ありがとう。凄くたすかるよ」

「では、私はこれで」


 アルマは樹の部屋を後にした。


 ようやく書類が一段落した頃、樹には王宮からの手紙の封を開けた。


「どうせまた面倒事を押し付けられるんだろなぁ」


 そんなことを思いながら手紙を読む。


『明日、王宮へと来られたし』


 相変わらずの内容である。


「いや、いい加減用件も書けよ」


 そう突っ込む樹であった。

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