第68話 新たな使用人を求めて

 その日、樹は昼過ぎに起き出した。


「セザール、ちょっといいか?」


 樹はリビングへと降りると掃除をしていたセザールに声を掛けた。


「はい、何でございましょうか?」

「シャルを雇ったのはいいが、シャルまで冒険者にしちゃってセザールの負担が増えたよな。もう一人使用人を雇おうと思うのだけど」


 初めは人手不足解消の為に雇ったシャルだったが、シャルまで樹はたちと行動をする事が増えてきた。


「それは助かります。何分個の屋敷を一人で管理するのは骨が折れます」

「そうだよな。今まで無理させてすまんな」


 樹はセザールに軽く頭を下げた。


「いえ、とんでもございません。頭を上げて下さい」

「それで、使用人なんだが、当てはあるか?」

「それでしたらちょうどいい者がおります。少々、外出してきてもよろしいでしょうか?」

「もちろんだよ」

「ありがとうございます」


 そう言うとセザールは屋敷を後にした。


「ただいま戻りました」


 セザールが屋敷を出て数時間後、同じく燕尾服姿の青年を連れて戻って来た。


「おかえり。そちらは?」


 樹は帰って来たセザールに尋ねた。


「初めまして。私、ディルクと申します」


 そう言うと青年は綺麗に一礼した。


「彼は私の孫になります。彼の父親は現在、王宮で国王陛下にお仕えしております」

「おお、セザールの孫なのか。それなら信用出来るな。てか、セザールって執事家系なの?」

「作用でございます」


 樹はその事を初めて知った。

使用人家系というものが実在している事すら知らなかったのである。


「ディルク、これからよろしくな」


そう言うと樹は右手を差し出した。


「こちらこそ、最強と名高い樹さまにお仕えできるとは感無量でございます」


 樹はとディルクは固い握手を交わした。


「大袈裟だよ。人手不足で大変だから、セザールをサポートしてやってくれ」

「かしこまりました」


 そう言うとディルクは早速仕事に取りかかった。

流石は完璧執事の孫といった所か。

気遣いはできるし、行動が早い。

これで、セザールの仕事が少し楽になればいいのだが。


「あ、何ならメイドももう一人くらい雇っちゃうか」

「私は賛成でございます。アリアもシャルもメイドとはいえ冒険者ですから、メイドに専念出来る者を雇われてもよろしいかと」

「そうだよな。ちょっといい人材が居ないか探してくるよ」


 そう言うと樹は屋敷を後にした。

特に当ても無いが何となく外を歩きたかった。


「そう言えばこっちの方はあまり来た事が無かったな」


 そこは王都でも有数な歓楽街だった。

夕方から夜にかけては特に人が集める。


「あー、しまった。ここ、遊郭の方だよな……」


 そんな事を考えながら樹はさっさと歓楽街を抜けようとしたその時、店の軒先に座っていた一人の遊女と目があった。


「あ、彼女……」


 その彼女はどこか儚げな目をし、こちらを向いた。

樹はとっさに【鑑定】のスキルを発動し、彼女のステータスを確認した。


「これって……」


 樹は彼女のステータスに目を奪われてしまった。

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