第48話 エルフの里の復興に向けて

 ブレーズさんの姿が消えた後、樹たちは少し、里の様子を見て周った。


「やっぱり、3年も人が住まないとこうなるんですね……」


 シャルが悲しげな目を浮かべた。


「うん、これは復興にも時間がかかりそうだな」

「え、復興に動いてくれるんですか?」

「ああ、やれるだけの事はやってみるよ」


 そう言って樹はシャルの頭をそっと撫でた。


「じゃぁ、帰るか」


 樹は来た時と同様、転移魔法を展開すると、王都の屋敷へと戻った。


「おかえりなさいませ」

「ああ、ただいま」


 屋敷に戻るとセザールが出迎えてくれた。


「俺、ちょっと王宮に用事があるから行ってくるな」


 そう言うと樹は屋敷を出て王宮へと向かった。


「旦那様もお忙しいお方ですな」

「そうですよね。誰かの為にあそこまで動けるのはシンプルに凄いと思います」

「人の良さが旦那様の魅力ですが、同時に大きな弱みでもありますからね」


 そう言ってセザールは樹の事を心の中で心配するのであった。


 王宮へ着くと樹はメイドさんによって応接間へと通された。


「やぁ、樹くん。どうかしたかね?」


 そう言って陛下が入って来た。


「お忙しい中、急に押し掛けて申し訳ありません」

「いやぁ、気にするでない。他でも無君の為なら時間は割くよ」

「ありがとうございます。実は、またお願いがあって参りました」

「ほう、お願いとは何だね?」

「元エルフの里の復興にお力添え頂けないかと思いまして」


 樹は本題を陛下にぶつけた。


「ほう、それは何故だね?」

「実は、先々代の長老とお話する機会がありまして、その人と約束したんですよ、必ず元の姿に戻すと」

「なるほど。ワシもあの里をそのままにしとく訳にはいかないと思っておった。力を貸そうではないか」

「ありがとうございます」


 樹は立ち上がり、頭を下げた。


「まぁまぁ、頭を上げなさい。しかし、これだけは覚えておけ。人の良さがお前さんの弱みだ」


 陛下が真剣な顔で言った。


「人の良さはお前さんの長所でもある。しかし、そこに付け入る奴もいずれ出てくるだろう」

「はい、承知しました」

「うむ、分かっていればいいんだ。変なこと言ってすまないな」

「いえ、肝に銘じておきます」


 それから、陛下と少し世間話をした後、王宮を後にし、自分の屋敷へと戻った。


「おかえりなさい。どうでした?」


 戻るとシャルが駆け寄って来た。


「うん、何とかなったよ。これでエルフの里も復興に向かうと思うよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「これでブレーズさんの想いにも少しは応えられたかな」


 樹は目を瞑ると、ブレーズさんの優しい笑顔を思い浮かべて言った。


「はい、きっと喜んで居ると思いますよ」

「そうだよな」

「はい!」


 その翌日、元エルフの里復興へ向けての作業チームが組まれ、派遣された。

これが、復興への道のりの第一歩となる事であろう。

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