第46話 シャルの故郷へ

 その日は一通りの授業を見学すると、屋敷へと帰ることにした。

あまり目立つような事があったら、生徒たちも授業に集中出来ないだろう。


「そう言えば、シャルもだいぶ強くなったよな」

「そうですね。あの成長スピードには驚かされます」

「だよな。そろそろいいかもしれないな」


 樹とアリアは帰り道を歩きながらそんな会話をしていた。

樹の言う『そろそろいい』はシャルを故郷、元エルフの里へ連れていくということを意味していた。


「ただいまー」

「ただいま戻りました」

「おかえりなさいませ」


 玄関を開けて屋敷に入るとセザールが出迎えてくれた。


「おう、シャルはどこに居るか分かるか?」

「はい、確か夕食の準備をしていると思いいます」

「そうか、ありがとう。なら、夕食の時にでも話してみるか」

「そうですね」


 樹はそうアリアと話すと自分の部屋へと向かった。


「旦那様、夕食の支度が出来ました」


 シャルが部屋をノックする音で目が覚めた。

どうやら寝てしまっていたらしい。


「分かった。すぐ行くよ」


 そう返事をすると樹はリビングへと向かった。


「お、今日も美味そうだな。じゃあ、頂くとしようか」


 綾瀬家では使用人も含めてみんなで食事をすることになっている。


「「「「いただきます」」」」


 こうして、食事が開始される。


「なあ、シャル」


 樹が食事を終えると口を開いた。


「はい、何でしょうか」

「明日辺り、エルフの里にお前を連れていこうと思っている。いいか?」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、シャルもだいぶ強くなったしな。アリアもそう思うだろ?」

「はい、樹さまの言う通りだと思います」

「あ、ありがとうございます」


 シャルは立ち上がると勢いよく頭を下げた。


「おいおい、頭上げろよ。シャルの努力なんだから」

「いえ、私一人ではここまで強くなれませんでした。旦那様やアリアさんの教えがあったからこそここまで来れました」

「そう言って貰えてうれしいよ。でも、シャルが頑張ったのは確かだ」

「そうですよ。私も樹さまも見ていましたから。シャルさんが仕事終わりに一人で頑張っているのを」

「し、知ってたんですか!?」


 シャルは恥ずかしそうに俯いた。


「邪魔したら悪いと思って言わなかったんだがな」


 そう言って樹とアリアは微笑んだ。


「それじゃあ、明日行ってみるとしようか」

「はい、お願いします」

「アリアもそれでいいか?」

「はい、私は構いませんよ」

「じゃあ、皆、今日は明日に備えてよく寝るようにね」


 そう言うと樹は自分の部屋に戻った。


「さっき寝ちゃったからあんまり寝付けないなぁ」


 そんなことを考えながら樹はベッドの上でゴロゴロしていた。


 翌朝、いつもよりスッキリ目が覚めた。


「やっぱ、しっかり寝ると違うなぁ」


 そんな事を呟きながら階段を降りるとシャルとアリアは準備が終わっているようだった。


「遅いですよ! 旦那様!」

「すまん、すまん。じゃあ、行くか!」

「「はい!」」


 こうして樹たちはシャルの故郷、エルフの里へと向かうべく屋敷を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る