第42話 樹とアリアが教育者に

 陛下たちの話には続きがあった。


「学長は樹くんにお願いするわけだが、副学長にはアリアくんに就任して頂きたい」

「「え!?」」


 樹も今日は樹のお目付け役としてついて来ていたアリアも驚きの声を上げた。


「私もよろしいんですか?」

「ああ、君の実力ならなんの問題もない」

「でも、私は魔術はあまり得意な方ではありませんよ?」

「何を言う。君のその武器は魔道具だろう? しかもかなり複雑な構造をしておる。そんなもんをいとも簡単に操れる君は十分魔術の素質がある」


 アリアの弾丸には確かに魔力が込もっている。

銃を通さないと魔力を発揮できないと言っていたが、その魔力の強さは常人の10倍はある。


「樹さまはどう思われますか?」


 アリアはチラッと樹の方を向いた。


「いいんじゃないか。アリアが副学長なら心強いしな」

「本当ですか? そういうことなら是非やってみたいです」


 珍しくアリアが自分の感情を表に出した。


「よし、じゃあ、これは決定ということでいいかな?」

「はい」

「大丈夫です」


 二人は了承した。


「では、魔術学院について簡単だが、説明させてもらうぞ」


 魔術学院には中東部と高等部が存在する。

中等部は13歳から入学可能であり、3年制。

高等部は中等部の卒業生であり、16歳から入学可能である。

両方とも、入学するには試験にて、一定基準を満たす必要がある。


 公爵様が魔術学院について簡単に説明してくれた。


「以上が大体の魔術学院の概要だが、何か質問はあるかね?」

「大体把握しました」

「私もです」

「そうかね。では、そういうことでよろしく頼む」


 話は以上ということで、樹たちは王宮を後にした。


「俺たちが学校の先生か。しかも学長って」

「まさかの展開でしたね」


 そんなことを話ながら、樹たちは屋敷への帰り道を歩いていた。


「最近、やけに賑わっているな」

「王都の中心ですからね」

「そうだけど、こんなに人居たか?」

「来週、お祭りもありますし、その関係じゃないですか?」

「お祭り?」

「あら、樹さまはご存じありませんでしたか」


 樹はこの世界に来てまだ一年経っていないので知らなかったのだ。


「ああ、最近こっちに出てきたからな」

「結構有名なんですよ。創造神様に世界創造を感謝するお祭りなんです。露店もたくさん出ますし、楽しいですよ」

「へぇ、創造神ね......」


 樹の頭には自分を転生させてくれたお爺さんの姿が浮かんだが、まさか、神様と会ったことがあるなんて言えるはずも無かった。


「ただいまー」


 そんな事を話しているうちに屋敷へと到着した。


「「おかえりなさいませ」」


 セザールとシャルが出迎えてくれた。


「陛下たちのお話はどうだったのですか?」

「それが、俺たち、学校の学長と副学長になっちゃった」


 そう言って樹はセザールとシャルに笑って見せた。

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