第14話 摘発後の後始末

 樹たちはそのまま、王都のギルドに転移した。

あらかじめ連絡させていた通りの場所に転移すると、ギルマスたちが待っていてくれた。


「お待たせしました。攫われていた人たちは全員救出してきました」

「うむ、ご苦労だった。後のことは任せなさい」


 ギルマスは他のギルド職員たちに指示を出し、それがひと段落すると樹とアリアの方に戻ってきた。


「ギルドマスター室に来てくれるか」

「分かりました」


 ギルマスに促され、二人は対面のソファーに腰を下ろした。


「ボスを取り逃がして申し訳ありませんでした」


 二人はギルマスに頭を下げた。


「いや、二人とも頭を上げなさい。おかげ様でボス以外の組織メンバーは全員捕らえることが出来ました。十分な働きをしてくれました。お疲れ様でした」


 そう言ってギルマスは優しく微笑んだ。


「ありがとうございます」

「それで、こいつが報酬だ。今回はちょいと色を付けておいたからな」


 ギルマスは革の袋を渡してきた。


「頂戴します」


 受け取った報酬を樹は懐に仕舞った。

後で、アリアと折半だな。


「では、我々はこれで失礼しますね」

「ああ、ご苦労だった。また何かあればよろしく頼むよ」

「分かりました」


 二人はギルドを出ると屋敷に向かって歩いた。

相変わらず、アリアは樹の三歩後ろを歩いている。

アリアはメイドとして当然だというが、正直、樹としては隣を歩いて欲しかった。


「ただいまー」

「ただいま戻りました」

「お帰りなさいませ旦那様。アリアもお疲れ様です」


 執事のセザールが迎えてくれた。


「お食事の時間まではまだ少し時間がありますのでお休みになられてはいかがでしょうか」

「ああ、そうするか。あ、アリア、ちょっと部屋に来てくれるか」

「かしこまりました」


 アリアは樹の部屋に入ると対面のソファーに腰を下ろした。


「色を付けてくれたって言ってたけどいくらだろうな」


 革の袋を開けると中には金貨で16枚入っていた。


「おお、金貨16枚か。じゃあ、8枚づつ折半だな」


 それを聞いアリアは驚いたような顔をしていた。


「ん? どうした?」

「私も、頂けるのですか?」

「当たり前だろ。二人でやった仕事なんだから俺だけもらうってのもおかしな話だろ?」

「しかし、私は樹さまから十分な給料も頂いてますし……」

「それはそれ、これはこれだから。これからも二人でやる仕事の報酬は折半だ。いいから受け取っておきなさい」

「分かりました。それじゃあ、頂戴します」


 アリアは渋々という形で樹から報酬を受け取った。


「久しぶり暴れたら疲れたよな」

「そうですね」

「アリアも休暇が欲しかったら遠慮なく言ってくれよな。メイド業だけでなく、冒険者業にまで付き合ってもらってんだから」

「いえ、私も冒険者、悪くないかもと思いましたので、これからもよろしくお願いしますね」

「おう、こちらこそだ」


 二人はその場で固い握手を交わした。


 その日は夕食を食べ終わると早々に就寝してしまった。

これからのアリアとの冒険者生活への期待を胸にしながら。

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