初恋の君へ……、俺のリベンジ物語
上条 樹
第1話
それは校庭を美しい桜の花びらが舞う季節。
恋愛小説のような信じられない運命的な再会であった。もう二度と会うことが無いだろうと諦めた俺の初恋。あれから俺は他の女の子を好きになった事はなかった。君を超える女の子は俺の前には現れなかったのだ。
今、彼女の美しい顔が俺の目の前にあった。
その大きな瞳を閉じて俺の唇が重なるのを待っている。彼女の心臓の鼓動が俺にも伝わってくる。彼女の両肩を握りしめて、俺も目を閉じる。
そう俺達は昔のように・・・・・・・。
それは高校2年の終業式が終わってすぐの事であった。親父の仕事の都合で転校を余儀なくされた。妹の詩織はちょうど中学校を卒業したところで環境を変えるのにそんなに支障が無いとのことであった。しかし、俺は高校生活真っ只中での転校は流石に
家に帰ると家中が引っ越しの準備をしている。
「ちょっと、遅いわよ。お父さん仕事だし、私と詩織でてんてこ舞いよ!」母が段ボールを抱えて廊下を右往左往している。
「ごめん、今からやるよ」俺は靴を脱ぎ捨てて自分の部屋に向かう。
「お母さん!もう、小学校の時の体操服すてるよ!!なんだかちょっと私のじゃないやつ混じってるし!」詩織もバタバタ走り回っている。
「きっと間違えて誰かの持って帰ってきてたんでしょう!どちらにしても小学校の時の体操服なんて着れない物は捨てなさい!直樹、お前も要らない物を捨てなさいよ!本棚にある漫画の本とかももう読まないでしょう!一緒に処分しなさい!」
「はいはい」部屋のドアを閉める。本棚の上段に小学生の頃に読んでいた漫画の本が数冊あった。「なぜこの本を俺は買ったのだろう・・・・・・」パラパラめくるとその内容は女の子が主人公の学園ものであった。あまり内容は覚えていなかった。その本を処分品を入れる段ボールの中に投げ込んだ。で、本棚の奥に隠している秘蔵の本を……。
「あっ、もうあのイヤらしい本捨てといたから!」急に扉を開いて母親は宣言してからもう一度扉を閉めた。俺はあしたのジョーばりに真っ白に燃え尽きていた。
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