アトキンスン兄弟?
おいおいホームズ、トリンコマリの惨劇のことを忘れたのか?
セイロン島の軍港の。
【ネタばらしのないただのコラム】
ホームズシリーズには、作中に名前や概要だけ登場する事件が存在します。いわゆる、語られざる事件というやつですね。
シリーズの大半は、ホームズが解決した事件をワトソンが手記として発表したもの、という形で語られます。ホームズ自身が記述者となる「ライオンのたてがみ」のような例外はありますが、基本的にはワトソンが記述者。
ホームズは名探偵ですので、すべての事件をワトソンが発表できたわけではありません。語られざる事件は、なんらかの事情でワトソンが書き残せなかった事件という立ち位置になるのでしょうか。
少し視点をずらすと、ホームズがいかに優秀な探偵であったか、を表現するために作者のドイルが編み出した一つの工夫が、語られざる事件ともいえそうです。後年になると、語られざる事件に「あぁ、またやってんな」とニヤニヤする読者もいたでしょう。詳しいことが明かされないからこそ、読み手は好き勝手にどんな事件だったか想像することができます。
実際にパスティーシュ(今で言う二次創作といえば、カクヨムさんのメイン読者層のみなさまには伝わりやすいでしょうか)として発表された作品の多くで、語られざる事件がモチーフとなっています。そう考えると、ファンサービスの側面もあったのかもしれません。
では、この語られざる事件はいつ頃から登場しているのか。気になったので、第一短編集『シャーロック・ホームズの冒険』から読み直してみることにしました。
すると、第一作「ボヘミアの醜聞」から語られざる事件が存在していました。それが今回、取り上げた“トリンコマリのアトキンスン兄弟の奇怪な惨劇”。なんと依頼人が来るよりも前に言及されているのです。
ホームズの初登場は長編『緋色の研究』、その後、第二長編『四人の署名(四つの署名)』をへて、短編の発表となります。『緋色の研究』も読み直して、語られざる事件がないかどうか調べてみる必要がありそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます