　おいおいホームズ、「ソア橋事件」のことを忘れたのか？

　マリーア・ギブソンを撃った犯人として捕まったギブソン家の家庭教師だよ。

【ネタばらしコラム】

　この先、「ソア橋事件」（他にも訳題あり）の内容に言及します。未読のかたはご注意ください。

　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　ネタばらし、ここから

　真犯人は、亡くなったギブソン夫人。夫の愛情を奪っていった家庭教師のダンバーに罪を着せる形で、自ら頭を撃ち抜いたのです。周辺に凶器がなければ自死ではないというアイデアを成立させるために、ドイルはいろいろ仕込んでいます。

　本作で最大の仕込みは、ギブソン夫人を情熱的な人柄と設定したことでしょう。復讐のために自分で頭を撃つという並みの人間では到底できないことを「やりそうな人物」として描いているのです。

　うっかりするとミステリはトリック品評会・発表会みたいなものに陥る危険性をはらんでいます。小説の部分がきっちりとしているから、ホームズ譚は今も読まれているのかもしれません。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい