結核で死に瀕している英国婦人?
おいおいホームズ、「最後の事件」のことを忘れたのか?
マイリンゲンの英国館に来た女性だよ。
ダフォス村で冬をすごし、ルツェルンにいる友人のところに向かう途中で病に倒れた。
スイス人の医者は絶対に嫌だと言っていた。
【ネタばらしコラム】
注 この先、「最後の事件」の内容に言及します。未読のかたはご注意ください。
英国の犯罪を陰で操るモリアーティ教授とホームズとの決闘を描いた「最後の事件」。
物語の終盤、ホームズはワトソンを伴い、スイスへ。ライヘンバッハの滝に現れたスイス人青年は、宿で病人が出たと告げます。
スイス人の医師は嫌だという患者のため、ワトソンは宿に戻ることになるのですが……これが実はモリアーティの罠。ホームズと一対一になるための噓。
深読みすると、これは作者ドイルがホームズの最後をワトソンに見せないための工夫でもあったはず。置き手紙という形にするには、どこかでホームズとワトソンを引き離す必要があったわけです。
記録者(=語り部)であるワトソンが生存していなければ、「最後の事件」を語ることはできないので、ワトソンは生きている必要があったわけです。
モリアーティと対決してワトソンだけが死なないという結末は難しかったのでしょう。
現代の私が意地悪く考えると、どうしてもシリーズを終わらせたいのならば、「ホームズは生かしておいて語り部のワトソンを始末する」という選択肢も浮かぶのです。
この時期、ドイルはやはりホームズを恨んでおり、死ぬのはホームズでなければならなかったのかもしれません。
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