ヒルトン・キュービット?

「踊る人形」の事件を忘れたのか? あの奇怪な暗号を持ってきた人物だよ。ほら、ノーフォークのリドリング・ソープに住んでいた。




【ネタばらしコラム】

注 以下に「踊る人形」と「アベ農場」のネタばらしがあります。





 知名度なら「赤毛連盟」、「まだらの紐」と、この「踊る人形」がベストスリーでしょうか。暗号ものとして有名な作品ですが、注目したいのは依頼人が救われなかった事件であること。

 言ってしまえば、「シャーロック・ホームズの失敗」なのです。

 ヒルトン・キュービット氏も不幸ですが、夫人も不幸です。前回、取り上げた「アベ農場」が騎士(たち)が女性の愛を守り抜く話だったのとは対照的に、本作品は騎士になりそこねた男たちのお話なのです。

 撃たれたヒルトン・キュービット氏も、撃ったエイブ・スレイニーも、ホームズも。

 親が決めた婚約ではありますが、エイブ・スレイニーはキュービット夫人のエルシーのことを愛していたはずで、それだけに悲しい事件。

 一応、救いが用意されたエンディングですが、踊る人形のインパクトがなければ、かなりの異色作になっていたはず。

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