第139話 三日月島からの引越
三日月島の地下にある巨大コンピュータや巨大図書館を載せた円型宇宙船を魔の森の帝王、世界樹の中にある宇宙エルフ族の移民宇宙船R-1のもとに移築することになった。
半分になったドーナツ型の円型宇宙船の大半が地中に埋まっている。
問題は、半分になった円型宇宙船が積んでいる巨大コンピュータを作動させるための電力不足である。
三日月島では太陽光パネルが地中深く埋まっていたり、破損して十分な電力を賄えないことから、海流の流れが一定で強いところが海の中にあり、その海流の流れを利用して発電機を設置したが、それでもまだまだ電力量は十分でないようだ。
どれだけ巨大なコンピュータかわからないが、少し異常なほどなのだ。
調べていると何処かに大量な電力を消費する施設があるようなのだ。
引っ越し作業で何かわかるかもしれない。
引っ越し先の魔の森の帝王、世界樹のもとでは発電機を動かしても、魔獣や魔獣植物が集まる事がないと魔の森の帝王、世界樹から説明を受けた。
そのうえ、サンダーバードと融合したアカネも魔の森の帝王、世界樹は魔獣や魔獣植物の頂点に立つものだから大丈夫だと言い放った。
それでも不安が残る事から、魔の森の帝王、世界樹の付近にも水量が豊富で滝が落ちている場所があるので滝の裏の家の発電機を真似て設置することにした。
太陽光パネルも移民船R-1に沢山ある事から問題はないそうだ。
設置方法は世界樹の根元で、船着き場や社務所の反対側に設置する事にしたのだ。
半分になった円型宇宙船が俺の魔法の袋に入るかが不安ではあるが。
三日月島に安置した二人の亡骸を入れた棺も魔の森の帝王、世界樹のもとに持ってくることになった。
同族の眠る墓地に安置してあげた方が良いという事からだ。
二人の亡骸を入れた棺は先に亡くなった宇宙エルフ族の墓地に埋葬したのだ。
身重な嫁達は魔の森の湖畔の館に残して、俺は転移装置を使って三日月島に転移する。
巨大コンピュータと巨大図書館の詰まった円型宇宙船の移築が始まったのだ。 三日月島はその名の通り三日月型の入り江と2千メートル級の山脈を持つ孤島であり、山脈の中央には火山が煙をあげている。
入り江の反対側は断崖絶壁で、入り江側は砂丘が続く、その砂丘の中に円型宇宙船が埋まっているのだ。
俺は砂丘の中央付近にある白い四角い建造物から地下に降りるとそこには、巨大な半円形になった円型宇宙船があるのだ。
その宇宙船の中ではクリフさんとクリスティーナのアンドロイドがこの巨大なコンピュータについて可動実験等を繰り返している。
クリスも自分に似せたアンドロイドをもう一体つくり。
さらに、もう一体づつクリフさんとクリスティーナのアンドロイドも造っているのだ。
俺はその3体のアンドロイドを魔法の袋に入れて三日月島まで連れて来ていた。
不思議なことに魔法生物のゴーレムは分かるが、人類とよく似たアンドロイドも稼働したままでは魔法の袋には入らないのだ。・・・アンドロイド以外の機械類は稼働したままでも入るのだが?
魔法の袋からクリスやクリフさんとクリスティーナのアンドロイドを出して稼働する。
すると5台のアンドロイドが集まって、この巨大な半円形の円型宇宙船をどうやって取り出すかを協議し始めた。・・・以前も亜人種固有の病原体による感染拡大を防止する際、医療ポットの電力確保の目的で円型宇宙船搭載の太陽光パネルを掘り出す際も円型宇宙船を掘りだそうとして断念した経緯がある。どうなることやら?
お互いが頭からコードを出して接続しているので、声が全く聞こえない。
高速でデータを相互に送っているのだ。
結論が出たようだ。
この巨大な円型宇宙船を無理に取り出すとやはりこの島のバランスが崩れて、上に乗った山脈が崩壊したり、その影響で火山活動を誘発しかねないというものだ。
外板はそのままにして中にある巨大コンピュータや巨大図書館を持って行き、残った空間を今後の研究施設として使用するということになったのだ。
今回の大引越し作業は俺の妻達が全て妊娠している為、俺とクリフさんとクリスティーナのアンドロイド達が中心になって作業をすることになっている。
クリフさん達アンドロイド達は巨大コンピュータを分解し再構築する手順等の確認作業にかかりきりで、図書館まで手が回らない状況だ。
それで俺が巨大図書館の作業をしている。
書籍類は魔法の袋に入れれば良いのだから、楽勝だと思って本棚を取り外した途端船体が
『ギシギシ』
と音を立てたのだ。
巨大図書館の本棚を取り外そうとしただけで、円型宇宙船にかかる土の圧力で潰れそうになったのだ。
そこで巨大図書館や巨大コンピュータルームを補強しながら、書籍やコンピュータ本体を搬送する事にしたのだった。
不格好になるが、本棚の柱等に補強材を沿わせて補強していくことにした。
俺は壁を補強しようとしている時に何処かの隠しスイッチに触れたのか、壁が開き中には女性のマネキン人形のような経年劣化で半分壊れかけたロボットが十体何とか立っているのを発見したのだ。
クリスのアンドロイドを呼んで、そのロボットを見せると、宇宙エルフ族の司書型ロボットで長い年月のため金属が劣化する、経年劣化によって直ぐには動かないと言うのだ。
この司書型ロボットを治せるかクリスのアンドロイドに聞いてみると、最近手掛けている魔法生物のゴーレムをアンドロイドの体内に取り込むように融合させると治せるのでないかと言うではないか。
早速俺は、司書型ロボット十体を魔法の袋に入れて妻達のいる魔の森の湖畔の館に転移装置で転移する。
ここでは生身のクリスの指導のもと、俺と妻達で司書型ロボットの体内に以前から造ったことがある司書型ゴーレムを融合させていく。
上手く三日月島にあった司書型ロボットを再生させることが出来た。
魔法生物のゴーレムは作った人の性格や雰囲気が出るので、妻達の作った司書型ゴーレムとの融合により、それぞれ個性的な司書型ロボットが出来た。
稼働された司書型ロボットは、司書型ゴーレムと上手く融合して自立思考が出来るようになったようだ。
司書型ゴーレムと融合した司書型ロボット・・・面倒なので司書さん達という。司書さん達を魔法の袋に入れて持っていこうとしたが、魔法生物のゴーレムも稼働していると魔法の袋に入らない。それで魔の森の湖畔の館の転移装置で三日月島に転移した。
魔法の袋は便利なのだが生物が入らないのが問題だ。生物が入れられるアイテムボックスが出来ないものか。・・・そうすれば身重になった妻達とも・・・不安材料だ悪寒がしてきた!
転移した司書さん達に、この巨大図書館の中の書籍類等を持って、移民船の本船である移民船R-1のある魔の森の帝王、世界樹のもとに引っ越して行くと説明すると、司書さん達が何ごとか相談を始める。
この場合も司書さん達は頭部からコードを出してお互いに接続しての会話だ。
静かで速い、一体の司書さんが図書館長だと名乗り
「以前の船長の思いの詰まった場所なので図書館の複製品をここに残してもらえないか。」
というものだ。
それも悪くないが時間がかかるのではと聞いて見ると、図書館長が床に手を置くと、大きく床がスライドしていくのだ。
大きく開いた床下は倉庫になっており、百体ほどの司書型ロボットが保管されているのだ。
これらの司書型ロボットは経年劣化を起こしていない。
この倉庫内は経年劣化防止装置が使われているそうだ。
どうやら経年劣化防止装置を稼働させるために大電流が消費されていたようなのだ。
巨大図書館内の書籍置き場や巨大コンピュータルームも人がいないときは経年劣化防止装置が稼働されているのだそうだ。・・・経年劣化を防止する装置はワープ航法と同じ原理で、ワープ航法の原理は同様に転移装置や転移魔法の原理と同様であり、それで船内では転移魔法等が阻害されたのだ。
床下の倉庫に収納されていた、これらの司書型ロボットを使って書籍の移動と複製品を作らせると説明を受けた。
図書館長の他に最初に発見した残りの9体は司書長として働いていたため、この十体は常時外にいたのだ。
この司書さん達が乗り組員だった二人の宇宙エルフが亡くなった時に棺に入れて埋葬し、その後俺が見つけた壁の中の倉庫に入ったのだ。
壁の中の倉庫内の経年劣化防止装置は蜘蛛型生物との戦闘か地上に不時着した際かわからないが壊れてしまっていたのだ。
それで俺が図書館長や司書長のロボットを発見した時には経年劣化で半分壊れたようになっていたのだ。
駄目もとで、図書館長に巨大コンピュータの修理修繕をしているロボットが居ないかを聞いたところ、巨大コンピュータの経年劣化を防ぐため経年劣化防止装置がコンピュータルーム自体に施されているそうだ。
それで修理修繕用のロボットはあまり必要がないので巨大コンピュータルームの床の倉庫に入っているそうだ。
図書館長の案内で巨大コンピュータルームに行く。
クリフさん達アンドロイドが待ち受けている中、図書館長が巨大コンピュータ内の扉の横の壁に手を置くと壁の一部がスライドして男性のマネキン人形のようなロボットが出てきた。コンピュータのメンテナンス作業の技術者ロボットで、このロボットはコンピュータルームの室長というらしい。
図書館長の権限はここまでで、図書館長は頭からコードを引き出して室長の頭にそのコードを繋げる。
今までの状況を室長に伝えているのだ。
図書館長は伝達事項が終わると室長の頭からコードを抜き取り、図書館の引っ越し作業に戻って行った。
今度は室長が床に手を置くとを置くと、図書館の時と同じで大きく床がスライドして床下は倉庫になっており、百体ほどの技術者ロボットが保管されている。
同様に2箇所目を開ける。
総勢二百体ほどの技術者ロボットが稼働を始めて巨大コンピュータの複製と解体作業を行い始めた。
司書さん達は女性型で技術者ロボットは男性に似せて作ってあるのだ。
解体したコンピュータや図書館の書籍が俺の魔法の袋に入れられていく。
受け入れ先の魔の森の帝王の場所は、宇宙エルフの技術者が総出で受け入れ準備をしている。
魔の森の帝王、宇宙エルフ族の宇宙移民船R-1の秘密漏洩防止の為、外周りを一般人の立ち入りを禁止するように魔獣植物を植え、その内側にさらに侵入防止の壁を設けている。
侵入防止の壁を城壁のように拡大して、その内部に巨大コンピュータや巨大図書館の書籍を入れていく事にしたのだ。
巨大な半円形の円型宇宙船の巨大図書館の書籍が半分くらいになったところで、図書館長と50体の司書型ロボットが魔の森の帝王の城壁内の図書館の整備の為に向かう。
空いた書籍の空間は司書型ロボットが複製した書籍で埋められていく。
また、その書籍の複製を終えた所から巨大図書館内の補強を同時に行っていく。すぐには潰れたりはしないだろうが、安全のため補強をしていくのだ。
図書館内部にある書籍を見たり読んだりする幾つもある椅子についても魔の森と、最新の新造の大型武装豪華貨客船にも備え付けた。
これで船旅も楽しくなるだろう。
図書館内部の引っ越し作業は順調に進んでいるが、巨大コンピュータの方は複製作業に手間取っている。
適当なところで巨大コンピュータの一部を運ぶ、宇宙エルフの技術者も三日月島の巨大コンピュータの解体と複製の応援のため向かう。
宇宙エルフ族の技師さん達も南国の暖かい気候風土は気に入ったようである。
ただ台風がよく来るので大変そうだ。
猛烈な台風のおかげで、風が吹く晒す浜辺で残っているのは、頑丈な円型宇宙船の出入り口の四角いコンクリートで出来た建物だけだ。
三日月型の山脈にへばりつくように巨大な果実が実を付けるジャングルが広がっている。
この島のジャングルの中には、動物と言えば俺達が持ち込んだ馬と雑食のキングワイルドボアと呼ばれる巨大なイノシシぐらいしかいないのだ。
このイノシシは雑食だが至っておとなしいので、この島の家畜として飼われるようになったのだ。
この島のジャングルの一部を切り開き、山脈の中に穴を掘ってホテルのような宿泊施設を造った。
穴を掘る作業中に温泉が涌き出したので、温泉旅館にしたらその噂をききつけて宇宙エルフ族の技術者さんが大挙して集まってきた。
宇宙エルフ族の技術者さん達は巨大コンピュータの解析で得た知識を使って見ようと山脈の中をもっと広げて研究室まで造り始めたのだ。
これを契機に三日月島も研究都市として発展していくことになったのだ。
巨大コンピュータの複製に必要な部品は、円型宇宙船内と魔の森の帝王内にある移民船R-1内にあるが、まだまだ部品が足りない。
宇宙エルフの技術者と技術者ロボットで鉱山から必要な金属類を精製して、巨大コンピュータの部品を作り上げていくが時間がかかっているようで、十分に部品をそろえることが出来ないようだ。
護衛戦艦の時と同様に、土魔法を使えるドワーフ族等の魔法使いに金属の分類と精製をやらせてみたら凄い量の金属類が出来上がるようになった。
これにより製鉄業だけでない精密機器製造の技術革新が行われた。・・・問題はドワーフ族の知識、知能の無さだ!
ドワーフ親方や技術者集団でさえも、同一形状の物を複製する事は中々出来ないうえに、何のためにこの仕事をやっているのか解らないので、仕事に対する熱心さが失われると、それに比例したように金属自体に含まれる不純物が多くなってしまうのだ。
それで、巨大図書館の引っ越しが終わる頃でも、魔法による金属類の精製が出来ても、製品化は遅々として進まないのだ。
それで、まだ巨大コンピュータは3分の1しか解体と複製が出来ずにいたのだ。
宇宙エルフ族の技術者等がドワーフ族に半導体のチップについて教えているが、ドワーフ族の頭の上に?マークが浮かんで見える。
何度か図書館内部にある睡眠学習の出来る椅子で知識を流し込んで教えても、三日もすると忘れてしまうのだ。この現象は特に高齢者に多いのだ?
経年劣化防止装置が働いていない今、膨大な電力が余っているので睡眠学習の椅子が全て稼働できるので、ドワーフ族には睡眠学習を繰り返しながらコンピュータの部品を作ってもらっているのだ。
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