7 わたしは、片瀬まりもは、

 それは大きなシーツだった。うちのクロゼットから引っ張り出した予備のシーツ。そのシーツに鉛筆で下描きをして、その線に沿ってシーツを切った。花火の柄に。

 さながら切り絵で描く花火だ。

 そしてそこに、裏から切り刻まれた絵を組み合わせてバラバラに張り付けていった。

 ところどころにセロファンや色紙も貼った。

 表側のほかの部分には、マニキュアを散らした。

 そうして、出来上がった作品だ。

 白いシーツに、花火が咲いた。

 刻まれた絵だから出来る、複雑な色の花。

 切り刻まれた絵を貼り合わせて作った、もうひとつの花火。

 わたしの全身全霊の絵で作った、大きな花火。


 その花火が、花火とともに咲いた。


「ゼンくんと一緒だから、出来たの。空ばっかり描いてただけじゃ、絶対出来なかった。FIRE*WORKSに行ってなかったら出来なかった。ゼンくんが切り刻んだって、わたしは、絵が好きなことを表現できる。花火が好きなことを表現できる!」


 叩きつけるように叫んでから、わたしはすっと、息を吸った。


「わたしは、片瀬まりもは、花火になりたい。とうめいなゼンくんの側で、ゼンくんを照らす花火になりたい」

 自分であり続ける、誰の色にも染まらないゼンくんの側で、ゼンくんを照らして輝ける花になりたい。

 シーツを握りしめて、ゆっくりとゼンくんに向かって歩を進める。

「わたしの世界にたくさんの色を、好きを教えてくれたゼンくんが好きです。花火になってもいいって、バカなことって笑わないでいてくれたゼンくんが好きです。わたし、バカだから、ゼンくんの気持ちを救えない。ゼンくんが傷つくような真似をしていた。でも、それでもわたしは、ゼンくんが」

 シーツを手放す。そっとその手を伸ばす。

 さらさらの茶色い髪。女もののブラウス。チェックのスカート。

 それに身を包んだ男の子を抱きしめる。

「野木善くんが、大好きです」

 わたしの告白を追うように、また花火が上がる。ドンッ、ドンッ、と響く音を身体中で受け止める。世界が、色で満ちていく。

 夏の夜空を彩っていく。

 その中で、自分を見失わないでいられる「とうめい」が、わたしをゆっくりと抱きしめた。

 首元がくすぐったい。

 ゼンくんの唇が、微かに触れていた。

「まりもは」

 聞こえるか聞こえないかの小さな声で、ゼンくんが、言った。


 まりもはもう、花火だよ。

 俺の中で、ちゃんと咲いてる。


 その言葉の意味なんて、結局本当は全然分からなかったけれど。

 何かを許されたような気がして、わたしは結局またワンワンと、子どもみたいに泣いてしまった。


 ◆


 その後、ふたりで手を繋いでフロアへ戻ったら、大地先生が困った顔で迎えてくれた。

 FIRE*WORKSへ送り出されて、たどり着く直前に、花火大会最後の連続打ち上げが始まった。

 真っ白なFIRE*WORKSは、鮮やかな色に染まっていた。

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