二人の精霊1


とある森の奥。二人の精霊が話し合っていた。


「なぁ、シヴ。精霊王様が契約したってことは」


「ああ。が誕生した。我ら精霊の」


『……』


「だとすると…誘拐もあるか」


「まぁな。でも、姫様を守るのも


「…セトリアス様に話さないとな」


「でも、フレアと言う少女の本性を見抜かないといけない」


「いくら精霊王様が信頼しているとはいえ、まだ怪しい」


「と思った事もある。けど、セトリアス様がこうおっしゃられた」


『……』


「『彼女は私の来客です。乱暴に扱うなど一切許しません』と」


「……セトリアス様がそうおっしゃったんだな? なら、疑う余地もないな」


「はぁ。とにかく私達が彼女を守ろう」


「と言っても姫様は今まで一度もいなかったんだけど」


「いや、一人はいたぞ」


「そうだっけ?」


「別世界の人間だが」


「…確か…」


『……』


「とりあえずその話は一旦置くとして。……精霊王様も随分変わられた」


「だな。雰囲気が柔らかくなられた」


『それってどう言う意味? シヴ、レン』


「「! せ、精霊王様!? どうしてここにっ!?」」


『どうしてって、さっきからずっといたよ? 王のことを無視するなんていつからそんな生意気になったんだろうね』


先程まで黒猫だった精霊王が人化した。


「ま、フレアに傷一つつけてみな? 僕と神様が地の果てまで追いかけるから」


精霊王は妖艶に、妖しく微笑みを浮かべた。


「「っ! は、はい!!」


精霊二人はその威圧オーラに蒼白の表情になった。






シヴとレンが森から姿を消した後、一人精霊王が呟く。


『ったく。フレアに余計な疑いを掛けて。あいつらも邪魔をするし。ああでも、シエルよりまだマシか』


『フレア、ごめんね。フレア…僕の最愛なる心友よ』


『…後で神様と話すか』


ただ一人の言葉を風はかき消した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る