第288話 星門の守護者

「あれがここの守護者だにゃ」


 クロノスが指さす方には、金色に輝く巨大なゴーレムが2体。

 その先にあるのは、間違いなく星の精霊がいる祭壇があるだろう。


 ここの守護者は、どうやらあのゴーレム2体が守護者のようだ。

 

 警戒しつつも、扉の近くまで進む。

 すると、やはりというかゴーレムが扉を守る様にこちらを睨みつつ立ちはだかる。


『ここは星の大精霊が御座す場所。何人たりともここを通すわけにはいかぬ』


『我らが守りしこの扉を通りたければ、試練として我らを打倒すが良い。出来るのであればな』


 なんというか、ゴーレムにしては随分と流暢に話すな。

 ああ、考えたら機械の体というだけで、中身は精霊の眷属か。

 という事は、話をしているのもその眷属なんだろうな。


 と妙な関心をしていると、ある事に気が付く。


「あれ、試練というけど俺だけ戦えとかじゃないんだね」


『覇王とはいえ、自信過剰は身を亡ぼすぞ?お主が従える従僕たちは、お主のスキルや魅力、カリスマ等によりお主に力を捧げているのだ。だとすれば、それもお主のチカラと言える』


『その通りだ。だからこそ、お主が持つすべてのチカラを持って、我らに挑んでくるが良い』


「なるほど、そう言ってもらえれると助かるよ。今まで散々、タイマンさせられてきたからな。やーっと、みんなの力を借りれるわ」


 そういいつつ、カルマやニケの方を見る。

 二人は頷くと、再びその大精霊の力を解放した。


『『えっ?なんでここに他の大精霊が??』』


「カルマ、ニケ。二人とも左右に分かれて一体づつ抑えれるな?」


「承知。抑えると言わず、そのまま倒して見せましょう」


「承知しました主様。では、私は左側のゴーレムを抑え込みましょう。私が抑え込んでいる間に、リンやセツナに攻撃させてくださいね」


「了解だ。二人とも頼んだぞ?」


「承知」

「お任せを」


 右のゴーレムはカルマに一任する事にした。

 カルマがこう言った場合は、十中八九負ける事は無い。

 そのままひとりでいかせても問題ないだろう。


 ニケの方は、無理せずに抑え込むことに集中する事で安全に戦うようだ。

 この先の星の大精霊がどのような相手か分からないからこそ、慎重に戦う事を考えているようだ。


 さらに言えば、ついでにリンのスキル熟練度を上げる事を考えいるんだろうなこれは。

 こんなボス戦でそういう事を考えるなんて、誰に似たんだか…。


 うん間違いなく、俺だな。


 戦闘に入る前に、アリアとサナティを下がらせる。

 この二人だけは超人では無いので、あのゴーレムの攻撃を喰らえばひとたまりも無い。


 今回は、ガード役のニケが戦闘に参加してしまうので、下手に近づくと死んでしまう事もありうるのだ。


「おや、ユートは女の子二人をここに置き去りかにゃ~?」


「置き去りとは失礼な。危なくない位置まで下がって貰ってるんだよ。それとも、クロノスが二人を守ってくれるかい?」


「ん?いいにゃ。じゃあ、二人はボクが見ているからさっさとアレを倒して来るにゃ~」


「え、いいの?さんきゅーな。じゃあ、さくっと行ってくるよ」


「ユートさん、お気をつけて!」


「怪我をしたら二人で治療してあげますから、頑張ってくださいね」


 サナティとアリアに応援されつつ、ゴーレムの元に戻る俺。

 やっぱ、美女二人に応援されるというのは悪い気はしないもんだ。


「ふむ、若干顔が緩んでいるぞユート殿」


「お、おう。いかんいかん。ん-、セツナも美人なんだけどな。どちらかというと、背中を預けれる戦友という感じなんだよなぁ」


「ふむ、褒めた後に落とすという事だな。どれ、その喧嘩買ってもいいぞ?」


「ゴメンナサイ。ちょっと口が滑っただけです。…さて、冗談はさておき、お手並み拝見と行こうか」


「了解だ。ニケが抑えている方をやればいいんだな?では、私はセリオンと共に仕掛ける」


「ああ、よろしく頼む!」


 言うとすぐにセリオンに飛び乗り、飛び発った。

 凄い勢いでゴーレムに向っていく。


「パパ~、私はどうする?」


「リンはクロと一緒に、足元から攻撃をしかけてくれ。上からは、セツナが仕掛けてくれる。足元から攻撃して敵の視界をかく乱して欲しい。クロ!絶対に踏みつぶされるんじゃないぞ?」


「うん、分かった」

「承知シタ!」


 リンとクロもそう言うと、すぐに駆けだした。

 リンは既にクロに乗っているのだが、なんとリンを乗せたまま影に潜っていった。


「おお、あんなことが出来るのか…」


「ねぇ、マスター!」

「私達はどう致しますか?」


「ヘカティアとディアナは、接近戦を仕掛けてくれ。あのゴーレムは堅そうだけど、思ったよりも動きが鈍い。あれは重たいからというより、中に操作している精霊がいるから、タイムラグみたいなのがあるんだと思う。だから、高速で攻撃を仕掛けてくれ」


「「りょうかーい!じゃ、いってきまーす」」


 双子の竜姫は、息をぴったり合わせて左右同時に攻撃を仕掛けていく。

 あの小さな拳から放たれるその衝撃は、冗談のような威力を持っていた。


 一撃一撃が、ドゴンッ!バキィッ!とどんだけ硬い拳なんだとツッコミ入れたくなるくらいだ。

 しかも一撃当たるごとに、衝撃波が巻き起こり、俺がいる所まで振動が伝わってくる。


 仲間になってからそれなりに時間が経ったが、出会った時に見せたあの凶悪な顔をすることは無いが、あの時と同じくらいにまで力を取り戻したようだ。


 そんな双子の攻撃を起点に、ニケも上空から雷を落とす。

 手の平から雷を発するニケは、大精霊というよりはどっかの神様みたいに見える。

 大精霊化したニケは、女神の様に美しく神々しい姿をしている。


 その姿のせいで、よりそう思うのだ。


 しかもその雷の威力も半端なく、一撃当たるたびにゴーレムは動きを止められて反撃する余地が無い。

 さらに当たった部分は弾け飛び、あちこちボロボロになっていく。


 そんな中、リンとクロも死角になっている影からにゅっと現れては、溜めてあったスキルを撃ち放ち不意打ちとともに大ダメージを与える事に成功した。


「いっけぇええ!〈グランドスラッシュ〉!!」

「弾ケロ…。スタークラッシュ!」


『ぐぬおおおおおおっ!あちこちからちょこまかと。なんと小賢しい。しかし、この程度ではっ!ぐはあっ、ごおうっ。なんのこれしき!ちょ、ちょっと遠慮が無さすぎ』


「余所見していると、こっちからも痛~いのいくぞ?」


 いつのまにか、セリオンの背中で立ち上がって構えているセツナ。

 集中とタメを必要とする事から大技を出すことが用意に想像がつく。


「セリオン、同時にいくぞ!〈グランドクロス〉!!」

「任せろ。〈絶対零度〉!」


 セツナの槍から放たれた十字の衝撃波と、セリオンから放たれた冷気がゴーレムに襲い掛かる。

 これも不意打ちに近い状態だっだったので難なく直撃した。


『うごおおっ。このままでは…。おい!そっちは一人なんだろう?こちらを…。なぬっ?!』


 様々な攻撃に翻弄されて、ダメージを受け続けたゴーレムはもう一体の方に支援を要請しようとしたようだ。

 しかし、そこで衝撃的な光景を目撃するのだった。

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