第196話 神葬の槍
「手は抜けないから、死ぬんじゃないぞ?"ニクス"」
LBO時代に最後にテイムしたペット、それはこの"フェニックス"だ。
近づくだけで炎のダメージを受けるので、難易度が高くてかなり手こずった記憶がある。
『それはこちらのセリフぞ。さぁユートよ、始めようか!』
ニクスは内心かなり焦っていた。
たった2ヶ月程で自分よりも格上に昇格している元主を見て、全力で戦っても勝てる気がしないのだ。
"どこの世界にSランク悪魔より強いテイマーが存在するというのか。
…なのに、この胸の奥の気持ちはなんじゃ?"
そう…ニクスは、歓喜に満ち溢れていた。
『最初から全力で征くぞ!〈
ニクスの周りで炎が踊り狂う。
その炎は周りに広がっていき、空気すらも焦がしていった。
「じゃあ、俺も最初から本気でいく。〈幻体龍神〉!」
"竜玉"を掲げて幻龍の力を解放する。
そして、すぐに〈
〈
『な、なんじゃそれはっ!ぐああああっ』
初めて見る攻撃に躱す術もなく、直撃を喰らうニクス。
そのまま地面に叩きつけられるのだった。
すかさず追いかけて追撃を掛けていく。
「「うおりゃああああああああ」」
オーラを纏った二人のユートの拳がニクスを空に打ち上げた。
『グゥウッ、なんという威力なのじゃ!?でも、この程度ではまだ倒れるわけにはいかぬのじゃ』
ニクスは、吹き飛ばされつつも空中で体制を整える。
そして両翼を大きく広げて新たなスキルを発動した。
『発動…〈炎体分身〉!』
フィアが使うスキルと同じスキルを発動する。
その瞬間、ニクスは2体の分身を作り出した。
「やはりそう来たか…、でもこっちも二人いるんだ。負けはしない!」
体力が少ない分身の方を狙い、
『ふん、撃ち消せ!〈フレイムフェザー〉!』
そういうと、分身も含め3体のフェニックスから炎を纏った羽根が矢のように次々と飛んできた。
ユートも連続で矢を射って相殺していくが、数が多いので数本が体に触れてそこを焦げさせていた。
「時間を掛けるとマズいな。ブリザード!」
氷属性魔法を放ちつつ、自分自身はテレポートする。
ニクスの背後を取り攻撃を仕掛けた瞬間だった。
『掛かりおったなっ!〈カウンターエクスプロージョン〉!!』
俺が攻撃をした瞬間、ニクスの分身体がいきなり爆発した。
辺りを見ると同時に攻撃した"幻体"も、この爆発に巻き込まれて吹き飛んでしまった。
「ちぃっ、幻体が消えたかっ!アクアヒール!」
ポーションの栓を口で抜いて、中身を自分に振り掛けながら魔法で回復する。
しかし、ここが潮時とばかりにニクスは攻撃を畳み掛けてくる。
分身は弾け飛んだので単体での攻撃だ。
『妾の眷属よ、力を貸せっ!降り注げ炎の雨よ!〈フレイムレイン〉!』
辺りに高温を発するまるで炎の槍が無数に降ってきた。
俺は耐えれるが、他のメンバー達がヤバい!
「あわわわっ!火の槍がっ」
「全員防御態勢!メイア!マイニャを守れ!ニケ!みんなに防御壁を張るんだ!」
「畏まりました、旦那様!」
「承知しました、主様」
あたふたしているマイニャを庇う格好でメイアはマイニャを抱き寄せた。
そして取り出した大盾を天に翳して攻撃に備えた。
ニケはいつの間にか精霊の姿になり、周りのメンバーに魔法による防御壁を張り巡らせる。
これによりダメージはかなり抑えられるはずだ。
カルマはというと、降ってくる炎の槍一本一本を器用に相殺させて霧散させていた。
…相変わらず器用なやつだなぁ。
うん、コイツの場合は心配するだけ損だと再認識した。
俺はというと、『攻撃予測』でするすると回避していく。
数は多いが、ステータスが倍増しているので余裕をもって避ける事が出来た。
相手の死角に入った瞬間に〈瞬間移動〉を使って背後に周り、更に幻術で姿を消して近づく。
真後まで近づき、両手でその翼を掴み捕縛する。
『なっ、いつの間に!?妾も幻術が使えるのに気が付かないとはっ!』
「ははっ!気が付くのが遅いんだよっ!さぁ、これでもう逃げれないぞ?大人しくこのまま俺の元に戻って来いっ!」
ニクスは自身の纏う炎をより一層火力をあげて振り払おうとするも、強化されている俺から全く逃げることが出来無い。
俺も流石に生身で触れれば火傷を負ってしまうが、オーラを拳に纏わせる事でガードしている。
更に近づくだけで本来はダメージを受けるが、【氷晶】を持ってきているので殆どダメージを受けていない。
『くっ、離せっ!何という馬鹿力じゃ!こんな力がある筈が…っ!』
ニクスはバタバタと翼をはためかせようとするも、びくともしない状態に恐怖を覚える。
前に捕縛されたときは、様々な攻撃を受けて瀕死に追い込まれた上に調伏されて支配を受けたという記憶がある。
嫌いだとか恨みとかそういう感情は全く無いが、あまり忠誠心は無かった。
あの頃のユートは、この様な絶大な力を持っていなかったし、それに仲間になって日が浅いうちにこちらの世界に飛ばされたので、まだ絆も結んでいなかった。
『お主との記憶が無いわけじゃ無いが、それは妾の本当の記憶ではない。だからおいそれと、今のお主に従うわけにはいかないのよっ!ゆくぞい。…奥義!〈バーニングバースト〉!!』
ニクスは体を構成する魔力を全て炎に換える。
そして鳥の形をした炎そのものになった。
辺りの空気すら燃やし、全てを焼き尽くさんとするその炎は、ユートにすら大ダメージを与える。
そして、その炎は凝縮されて収縮したかと思えば、そこから今度は一気に膨れ上がり爆発した。
辺りを業火が包み込んだ。
ゴォォォオオオオオオオッ!!と燃え盛る炎の化身になったニスクは、ユートの手をすり抜けてあたり一面を更なる炎の海へと変えていく。
「ぐぅぅっ、こんな奥の手があったのかっ!厄介なスキル持ってるな」
爆発時に吹き飛ばされて、かなりダメージを受けるも直ぐに魔法とポーションで回復した。
幸い
流石にこれやったら倒してしまうかもと思ったが、実体を持たない相手にちまちまとダメージ与えてもあまり意味がない。
一気にダメージを与えて、魔力をごっそり奪う必要があると判断した。
「不浄を取り除け〈聖浄〉!…我に力を〈天啓〉!」
『
「魔に属する炎の鳥よ、我はその力を封じる。〈
さらに悪魔能力低減スキルを使い、相手を弱体させる事に…うし、成功した!
これで、あとは攻撃あるのみ!
「全てを凍てつかせ、その命の刻を止めよ…アブソリュートゼロ!!…更に凍てつかせよ、アブソリュートゼロ!!」
最高位氷魔法を、二連続で撃つ。
クアアアアアアアアアンッ!
と甲高く炎の化身が哭く。
全てを凍り付かせる魔法により、その姿が幾分か小さくなった。
「…命の源たる魔力をチカラに換え、神すら撃ち抜く神槍とならん…」
オーラを極限まで圧縮し、白く輝く槍をイメージして具現化させる。
この技は…この世界のユートが考え出した奥義。
完成させる前に、力尽きた彼が俺に託したプレゼントでもある。
特別にお前に見せてやろう、俺だけが使える『覇王』の奥義を!
「〈
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