第163話 家族という絆
「ユートさん!もうこっちに着いたんですね。まずは、クエスト達成おめでとうございます。本当に達成するだなんて、やっぱりユートさんは凄いですね」
「ああ、ありがとう。それはそうと、護衛に戻って欲しいと言ってたのになんで戻ってこれなかったんだ?」
今回の事件の経緯は、ギルド経由で伝えてある。
そういう事を想定してお願いしていたが、こちらで足止めをくらい続けたせいで間に合わなかったのだ。
「う…、すいません。貴族の人達に毎日のようにお誘いを受けてしまい、断っても全然聞いてくれなくて」
「まー、そんな事だろうとは思っていたがな。今回は俺がたまたま間に合ったから良かったけど、次からは俺との約束を最優先にしてくれ。お前たちを守ってくれるのは貴族じゃない、俺達家族だぞ」
「家族…。そうか、…俺たちはもう家族。そうですね、そうでした。本当にすいません!次からは、必ず守ります」
そう言いながら、全身全霊なのかという勢いで頭を下げて謝るカイト。
きっと、次からは皆の安全を優先に考えてくれるだろう。
この世界で自分を守ってくれるのが、赤の他人というのはあり得ない。
ましてや利益にしか吸い寄らない貴族など、なんの保証もしてくれないのだ。
それだけは、理解をしておいて欲しい。
「この【ウィンクルム】という組織は、利益のために結成したんじゃない。皆を守るために結成を決めたんだ。俺は、お前にもそれを期待しているんだぞ。…大体さ、そういうところだぞ?普段そうやって優柔不断にしているから、他のやつらに付け込まれるんだ。覚えがないわけじゃないだろう?」
「う…。ぐうの音も出ません」
「本当ですよ。女の子に言い寄られてニヤけた顔しっぱなしでしたし、ユートさんもっと叱ってやってください!」
隣にいたアイナもご立腹だったようだ。
アイナも貴族のお誘いをキッパリ断って戻ろうと言ってたらしいが、カイトが断り切れなかったらしく、ずるずると滞在が延びてしまったらしい。
「そうなのです!おかげで、ちゃんとしたお風呂に入りそびれましたよ…」
ミラは別の意味でご立腹のようだ。
ははは、相変わらずマイペースな子だなぁ。
「あ、それなら今メイアが準備しているぞ?用意出来たら声かけてくれるらしいから、女の子全員で先に入ってくれ」
「ええっ!ここにもあるんですか?高い宿屋にも湯船は無かったのに」
「ああ、ここは王族の来賓が泊まる為に作られた屋敷なんだそうだ。だから色々と設備は整ってるらしい。ただし、前の屋敷のより小さいからそこは我慢な。明日、簡易的なのをガントが作ってくれるから今日はそれで我慢してくれ」
『おお!!さすがガントさん、神です!』とかミラが興奮しながら言ってた。
ガントが知らないところで彼の株が上がったようだ。
まあ、教えてあげないけど。
「まあ正直言うと、今回の事は俺も想定外だったからな。全員無事だし、逆に俺らは運がいいよ。おかげでこの屋敷もタダで貸して貰えたしな」
ここが借りられたのは、補償という面もある。
襲撃された破損した屋敷の修復はもちろん、その間に掛かる家賃の補償をデブスの肩代わりをしてギルドが払ってくれた。
もちろん、デブスの処分の後に彼の一族から強制徴収されるみたいだけど、俺の知ったところじゃない。
「あ、そうだ言い忘れてたな! カイト、アイナ、ミラ、ゼイン、ダン。
今回のランクアップ、本当におめでとう。これからもお前達には期待しているからな!今日は、みなと同じく存分に楽しんでくれ」
「「「はい、ありがとうございます!」」」
5人は、嬉しそうな顔をして返事をした後に退室していった。
カイトは、もっと叱られると思ったのかほっと胸を撫でおろしていたが見なかったことにしておいてやろう。
もっとリーダーとして、育てていかないとだなぁ。
これも今後の課題にしておこう。
ちょっと会社の新米リーダーを育てていた頃を思い出すな。
ゼフと一緒に、この屋敷を借りるのに必要な書類やら、この街で買い物するのに必要な書類やらを処理し終わったころ、コンコンとノック音が聞こえてくる。
ゼフが扉を開けると、入って来たのはメイドのフィーであった。
「旦那様、お食事の用意が出来ました」
「では後は私めがやっておきますので、食事へお向かいください」
そう言いながら、ゼフは恭しくお辞儀をしながら俺を見送った。
「おっ、やっと来たか。早く食べようぜ!」
食堂に到着したら、既にみんな揃っていた。
ガントが待ってたんだ早くしろと、着席をうながされた。
俺が座って全員に飲み物が配られると、急にガントが立ち上がった。
「ごほん。…では、ユニオン【ウィンクルム】盟主ユートのランクアップを祝って!」
それに合わせて、他のメンバーもガタガタッと立ち上がった。
「「「カンパーイ!!」」」
みんな打ち合わせしてたのか、俺の方を見て乾杯してくれた。
サプライズに驚きつつも、俺も立ち上がり皆に感謝の言葉を伝える。
「いや、びっくりしたよ。みんな、有り難う。えーと、そうだな…今ここにいるメンバーは、俺にとって大事な仲間であり、共にこの世界で生きる家族だと思っている。この先も皆で協力していこう!よろしくな」
パチパチと拍手が起る。
皆の顔を見ると笑顔だった。
この先、誰一人として欠けて欲しくない。
絶対に守っていかねばと思う。
この笑顔を守るため、この先も全力で生き抜いていこうと決心したのだった。
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