第53話 ギルドマスターのお願い
約束していたミルバに会いにギルドへやって来た。
まだミルバは不動産の手続きのため戻ってきてないらしく、しばらくロビーで待つことにした。
「あんた、噂のSランクテイマーか…?」
一人の壮年の男が話掛けてきた。
「噂…? まぁ、多分そうだと思うけど、何か用か?」
見知らぬ男に声を掛けられて、何の要件か聞いてみた。
「あぁ、あんたらが天使の塔を20階層を攻略したと聞いた若い冒険者達が躍起になっててな。町がまた活気づいてきたんだ。有難うな」
なぜあんたが俺に礼を言うんだと思い、首を傾げる。
「おお、すまん。申し遅れたが、俺はこの町のギルドの団長やってるゼオスと言う。
支部長が事務方の長なら、俺は冒険者の取り纏めしている長だ。
一般的にはギルドマスターと言われている。クエストの請負や発行は俺が取り仕切ってるんだ。お前のお陰でどんどんクエストが消化されれば、俺の株もあがるって寸法なのさ。だから、これからも宜しくな!」
ガハハと笑って背中をボンボン叩かれた。
「なるほどな。俺は知ってると思うがユートだ。報酬のうまいクエストあったら言ってくれよな」
取り敢えず仲良くしとく方が良さそうと思って、挨拶はしておく。
「あぁ、こちらからも是非頼むよ。さて…本題といこう」
「ん、なんだ?クエストか?」
「いやまだ違うが…。お前等が旅立った翌日にな、結構腕が立つ冒険書たちがやって来たんだ。ランクもAランクばかりでな。俺の知らない奴しかいなかったし、最近王都の方でAランクに到達したんだろうな」
「へぇ、それで?」
「そいつらがな、【
顔をしかめてそう言った。
「奥に潜ってるんじゃないのか?俺らみたいにさ」
「いやお前等が行ってるならわかる。だがAランクしかいないチームじゃ突破出来ないんだよ、あそこは」
「じゃあ、…全滅したんじゃないか?」
「ああ、俺もそれを心配している。だが貴重なAランク冒険者を5人も一気に失うのはさすがに勿体無い。なんとか助け出したいと思っている」
「あー、そういう事ならお断りだ。俺にメリットが無い」
「おいっ、まだ依頼してないだろ?!だが頼むよ。もう手遅れかも知れないが、依頼出来そうなのはお前しかいないんだ。生存確認だけでもいいからよ!」
「丁度帰ってきてるとこかも知れないぞ?」
「それならいいが…。今日一日は様子見る。だが明日の朝までに帰ってきてない場合は行って来て欲しい。もちろん報酬は弾むぞ?」
うーん、どうしたもんか。
「俺にも用事があるし確約は出来ない。まして、あそこは準備しないで行くのは危険すぎる場所だ」
地上に入口があり、地下に潜っていくタイプのダンジョンで、潜れば潜るほどMAPが広くなっていく。
LBO時代には何度か足を運んだこともあるが、いい思い出は少ない。
中は冒険者をかく乱する魔力が流れており、方向感覚が鈍るため迷いやすくなっている。
また出現するモンスターがすべてアンデット系であり、物理攻撃が効きにくいために戦士には向いていないダンジョンである。
魔法も低ランクではまるで役に立たないほど抵抗値が高いモンスターばかりのため、出現するモンスターのランク以上に厄介になっている。
なので最低でもAランクの以上の
だがうちにはそんな職業はいない。
「…うちのパーティーには
一応事前に確認しておく。
正直、助けなかったら批判されるとか勘弁してほしい。
妙に名前が売れてしまっているようなので保険を掛けておく。
こっちは生活がかかっているのだし…みんなの生活がだ。
「ああ、もちろんだ。死にに行けとか酔狂なことは言わんよ。状況を確認出来たらクエスト完了。もし、保護して帰ってきたら追加報酬くらいで発行しておく。冒険者は自分の命は自分で守るのが原則だ。誰も文句は言わない」
「ああ、そうして貰えると助かる。とりあえず、今日はやる事があるんでな、夜にでも一度状況を確認しよう。それから具体的に詰めようか」
「ははは、受けるか分からないという割にはしっかり段取りを組むんだな。お前の人柄が分かった気がするよ。ありがとう。では夜にここで待っているぞ。職員には話を通しておくから、奥の応接間で打ち合わせよう」
とりあえず普段の癖で段取りをしてしまうのには、自分でも苦笑いしてしまった。
ああ、了解したと答えて、ギルドマスターのゼオスに別れを告げた。
そこで丁度ミルバが戻ってきたようだ。
ゼオスを見てギルマス!?と一瞬驚いていたが、俺に用事があったようだと言うと、もう流石としか言いようがありませんよと返ってきた。
さておき、ミルバからこれが資料ですといくつかの証印つきの羊皮紙を渡された。
紹介する事と、中に入ることをこれで承諾受けている証になるらしい。
これが無いと不法侵入ですぐ牢屋だ。
「早速ですが、一番近くの物件へ行きましょう。歩いてすぐなので時間は掛かりませんし」
と帰ってきたばかりですぐ出掛ける事を躊躇しないで、案内を開始してくれた。
やっと物件が見れるので行方不明の冒険者の事は頭の片隅によけて、どんな物件なのか楽しみにしてついて行くのだった。
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