Turn268.剣聖『まずやるべきは……』

「火焔山烈斬りぃいいっ!」

 炎を纏った剣撃を、アルギバーはドリェンに向かって放った。


──キーンッ!


 その太刀は、ドリェンの硬い皮膚に弾かれてしまい、傷すら負わすことが出来なかった。

「ガァアァアアアッ!」

 ドリェンは大岩を引っこ抜くと、それをアルギバーに向かって投げ付けた。

「やば……!」

 地面に着地したアルギバーは、直ぐ様森の木々の陰に隠れ、岩石の飛礫を回避したものである。

 標的を見失ったドリェンは、それでも手を休めなかった。ひたすらに岩石をあちこちに投げ付けた。

 アルギバーは草木に紛れながら、陰でそれを躱し続けた──。


──そんな攻防がいつまでも続いた。

「たぁあああ!」

 隙をついては、アルギバーが草場から飛び出して攻撃を繰り出す。

──しかし、ダメージを与えられず結局は岩石を投げ付けられる。鼬ごっこであった。

 ドリェンには全く攻撃が通っていない。どちからの体力が尽きるまで、無意味な攻防を続ける他ないのだろうか──。


──ベベンッ!


 厄介なのが、聴こえてくるこの三味線の音色である。ドリェンの力を上昇させている。

 コトハの時もそうだ。この音色さえ止めることが出来ればバフが消え、アルギバーにも勝機はあることだろう。


 三味線の音のする方向を、アルギバーは睨み付けたものである。

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