Turn173.勇者『退院祝い』

『退院おめでとう』

 聖愛から退院祝いのメッセージが携帯に届いていた。

──これはなかなか丁度よいタイミングである。

 メッセージをくれるということは、聖愛も少しは時間が空いているのかもしれない。


『渡したいものがあるんだけど、来れない?』


 後々、学校で渡すというのも良いのだが、できれば感謝の気持ちは早めに伝えたいものである。

 ものはついでと、そんな返信を聖愛へと送ってみた。

──まぁ、断られる確率の方が高いだろう。

 そう思ったが、返信の内容はこうであった。

『別に構わないわよ。今一段落したところだから』

「一段落?」

 物言いが少々気になって首を傾げたが──まぁ、承諾してくれたのだから嬉しい限りである。

『どこに行けばいいの?』

「そうだね。それじゃあ……」

 僕は目についた喫茶店を待ち合わせ場所に選んで、聖愛に位置情報を送った。

「聖愛が来るまで、何か食べて待つとしよう」

 ハンバーグ定食やフルーツパフェなどの食品サンプルが並んだショーウィンドウを横目に、僕は喫茶店の中に入っていった。

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